第37回 外国人雇用する際の事前準備について
暖かい春の陽ざしを ポカポカと背中に受けて 平らな道をのんびりと歩いてゆく── そんな調子のいい時ばかりはないんだな 『相田みつを』
コロナ発生の前はのんびりと歩いていませんでしたか?
特に旅行や食品関連に従事していた方、そしてコロナの影響で有形無形に影響があった方々、有事の際のビジネスの在り方を再度考えてみたいものです。
第37回 外国人雇用する際の事前準備について
1:外国人労働者雇用の実態
単純労働に従事する外国人の労働力は「安く雇える調整労働力」の要素が強く、高い賃金を払えない企業や、日本人があまり好まない職種で人手不足に悩む企業では、利用しやすい労働力としてまだまだ欠かせない存在とされているのが実状です。
単純労働に従事する外国人労働者には不法就労者が少なくありません。これらの不法就労者が、作業中の事故などで負傷しても、労災保険を申請することによって不法就労者の雇用が発覚することを恐れる事業主が申請をせず、また外国人労働者も、不法就労の発覚による強制送還を恐れ、事故によるケガの治療などを十分に受けられないまま泣き寝入りをしてしまうケースが多く見られます。
そこで、行政は、外国人労働者の人権をも脅かすトラブルや、外国人犯罪などの増加により、不法就労者の取り締まりの動きを強めています。
雇い方を間違えるといろいろな罰則がありますので注意が必要です。
① 上陸拒否期間の延長
退去強制歴がある者は10年、出国命令により出国した者は1年間、
日本への入国が禁じられる。
② 不法入国の罪等に関する罰金額の上限引き上げ
不法入国の罪等は罰金300万円、不法就労助長の罪は罰金300万円、
無資格資格外活動の罪は罰金200万円が上限となる。
③ 在留資格にかかる活動内容を偽った場合の資格取り消し制度の新設
等々の罰則があります。
2:外国人労働者雇用における留意点
外国人を雇用する経営者の中には、「外国人は安く雇用できる」と勘違いをしているケースがありますが、外国人労働者を雇用する場合、最低賃金法など日本の労働関係法令は外国人にも適用されます。
(その他、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険、職業安定法など)
外国人の雇用も、基本的には日本人を雇用する場合と同様の義務と責任が生じます。
企業にコンプライアンスの遵守が求められる昨今、外国人の雇用に関しても、正しい法律知識をもつことが必要です。
3:採用したい外国人像を明確にする
外国人を採用する際には、採用したい外国人像を明確にすることが重要です。
なぜなら、雇用したい外国人によって、取得する「在留資格」と、それに伴う採用活動や入国手続き、雇用によって得られる効果が大きく異なるからです。
<外国人を雇用する際の検討事項>
(1)外国人を採用する目的は何か
(2)外国人に依頼する仕事、ポストは何か
(3)どのくらいの人数を、どのくらいの期間雇用するか
(4)どのような外国人を採用するか
(5)労働条件、待遇、雇用形態はどうするか
(6)募集方法、採用選考基準はどうするか
(7)入管法上取得する在留資格の種類、入国審査手続きはどうするか
(8)必要経費はどのくらいか
(9)希望する人数、能力の者を確保できる見通しは十分あるか
(10)雇用することによって、具体的にどのような効果が、どの程度あるか
(11)どのようなトラブルなどが発生する恐れがあるか、対応策は何か
4:入管法をよく理解したうえで、雇用可能な外国人を採用する
外国人の日本での滞在や活動は、入管法によって規制されています。現行の入管法では在留資格制度を採用しているため、外国人雇用を考える企業は、就労可能ないずれかの在留資格に該当する外国人を、その在留資格で定められた活動範囲内の業務に、定められた期間内で、雇用することになります。