第213回 KOIに注意 〜勘違い、覚え違い、言い間違い〜
夫婦喧嘩で一番多い原因は、KOI(恋)ではないかと思っていますがいかがでしょうか?
「恋」すなわち、勘違い、覚え違い、言い間違いの頭文字をとってKOIですが、それぞれの意味は、間違って思い込むこと、間違って記憶すること、意図したことと違うことを言うことで、それは夫婦間だけに限らず問題を大きくしてしまいがちです。
例えば、まだ記憶に新しいのは、S元首相がある日の記者会見で、コロナ禍中に「感染拡大の防止を最優先に」というところ「感染拡大を最優先に」と言い間違え、さらに新型コロナの緊急事態宣言の時には、「徹底的な対策」を「限定的な対策」など言ってしまい支持率を下げる一つの要因になってしまいました。
笑い話で済むようなKOIであれば良いのですが、ある会社の社長が年頭挨拶で真剣な顔をしながら「全社員が一丸となって、一糸乱れずに」と話そうとして「全社員が一丸となって、一糸まとわずに」と言っていたというのです。
また別のある会社の管理職が「破竹の勢い」を「家畜の勢い」と憶え違いして、何度も部下に言って叱咤激励していたそうです。
私がある方の告別式に出席した時のことです、故人の元上司が用意した弔辞を読み始めました。「○○君!あなたは・・」と冒頭におごそかに言葉を発したのですが、故人の下の名前を間違って呼びかけてしまったのです。
もしかすると緊張したせいでの言い間違いではないのかと思ったのですが、その後にも何度か繰り返したためなのか、葬儀場内の温度が少し下がったような気がしたのは私だけではなかったと思います。
さらに最後に送る言葉で念を押すように「○○君!」と発してしまい、仏前に置いたその弔辞には個人の本当の名前が間違いなく書いてあることを、私は遺族の背を見ながら祈ってしまいました。
ある小噺があります、もしかすると広い日本のどこかであった話かどうか定かではありませんが紹介します。
あるお見合いの席、女性側の父親が挨拶をしましたが、ひどく緊張したせいか「ふつつかな娘でございますが、よろしくお願いします。」というところを「ふしだらな娘でございますが・・」と言ってしまったそうです。
友人同士の会話や仕事中の打ち合わせなどで例え話をする場合がありますが、その中にはKOIになりやすいこともありますので以下に挙げてみました。
特によく使われる顔とお腹関連のものを取り上げてみましたが、さて前後どちらが正しいのでしょうか。
「眉をひそめる」と「眉をしかめる」
「目端が利く」と「目鼻が利く」
「口ごたえ」と「歯ごたえ」
「歯牙にもかけない」と「鼻にもかけない」
「舌先三寸」と「口先三寸」
「腸(はらわた)が煮えくり返る」と「腹が煮えくり返る」
「腹に据えかねる」と「肝に据えかねる」
「腹をくくる」と「肝をくくる」
「腹をかかえて笑う」と「へそをかかえて笑う」
すべて前者が正しく後者がKOIなのです。
その他にも、ついKOIしやすい例を探してみました。
「そうは問屋が卸さない」と「そうは問屋が許さない」
「立つ鳥跡を濁さず」と「飛ぶ鳥跡を濁さず」
「出る杭は打たれる」と「出る釘は打たれる」
「取り付く島もない」と「取り付く暇もない」
「二の句が継げない」と「二の句が出ない」
「念頭に置く」と「念頭に入れる」
「馬脚を露す」と「馬脚を出す」
「愛想が良い」と「愛想を振りまく」
「お召し上がりください」と「ご賞味ください」
「取り付く島もない」と「取り付く暇もない」
こういったKOIは友人同士や家族だったら仕方がありませんが、社内や公的なところでは恥をかいてしまいますし、もしかすると誰も指摘してくれないこともあるので、何度も繰り返す恐れがあるので十分に気を付けたいものです。