第201回 お風呂ものがたり 〜フィリピンの紋々ブラザーズ〜

第201回 お風呂ものがたり 〜フィリピンの紋々ブラザーズ〜

私はお風呂が大好きで家の風呂、スーパー銭湯、ジムのサウナ、国内の温泉、海外の風呂等々と機会があれば浸かっていました。

しかし、このご時世でなかなかそういう機会が少なくなりましたので、私が今までに経験したお風呂についての出来事をご紹介します。

 

最近では若い人の間ではシャワー派がお風呂派よりも多いそうですが、お風呂は浸かることによって汚れが落ちやすくなるし、リラックス効果もあり衛生的精神的にも良いので、お風呂派が多くなることを願っております。

 

家風呂

私は家では時間があると、湯の温度を下げて1時間以上も湯船につかりながら読みかけの本を一気読みしています。

ただ最近は低温でも長風呂は高齢者の体に良くないということで控えてはいますが、それでも風呂から上がった後に体重計の目盛りが1kg以上減っているのを見ると、その場限りとはいえ、しばしの減量した気分を味わうのです。

風呂から出た後に長風呂は一石二鳥なのだとご機嫌になり、ついその後に入るはずの妻に「今日の風呂には1200ccの自家製入浴剤が入っているのだよ」と言うと、しかめ面をされてしまうのです。

 

スーパー銭湯

現在のスーパー銭湯は、複数の大浴場やサウナ、岩風呂、ジェット風呂、ひのき風呂は当たり前で炭酸風呂、電気風呂、塩サウナ、ミストサウナなどを設置しているのも珍しくありません。

スーパー銭湯ではコロナのクラスターが出たということも聞いたことがないですが、今はやはり訪れる人はだいぶ少なく私は毎月のように通っていますが、そこで妻に聞いた話しです。

風呂から出て着替えをしようとロッカーにカギを差し込んだ時のこと、100円玉が投入口からおむすびコロリンのように転がっていったそうです。

その行方を目で追っていたら、止まったコインを中年の女がひょいとつまんで何気ない風に自分の懐にしまいました。

妻は「100円玉を拾いましたよね、それ私のものなので返してください。」と言ったのですが、中年女はそんなことしてない、としらばっくれて無視をしたのです。

仕方なく、返せ、知らないの押し問答をしたらしいのですが、取り付く島もなく埒が明かずにあきらめざるを得なかったようです。

白旗を上げざるをえなかった気の毒な妻は、風呂上がりの顔をさらに赤くしてくやしそうに語っていました。

 

フィリピンのホテル風呂

日本ではもちろんフィリンピンでも「入れ墨お断り」の風呂は少なくありません。

私が定宿としていたマニラのNホテルにあるサウナ付き共同浴場も、日本人客が多いためか受付の横に各国語でその注意書きが書いてありました。

いつものように初めに洗い場に行ったら、なんと背中や腕にびっしりとその種のデザインを散りばめた男が座っていたので、横目線しながら一つ間を空けた椅子に座り入浴前の汗を流したのです。

それではと湯船に入ったらそこにも倶利伽羅紋々を背負った小太りの男が二人、「○○イムニダ!」「△△イッソヨ!」「××オプソヨ」などと周りのことなど気にせず大きな声で話しているのです。

これではたまらんと広めのサウナ室に入ったとたん、そこにも先ほどの洗い場の紋々Aが股間にタオルもかけずに足を広げて座っているのでした。

ほどなくして、湯船にいた紋々BとCが入ってきて合流、紋々スリーブラザーズの結成となってしまったのです。

私はサウナの汗と冷や汗をたっぷりとかいたので、水風呂で気持ちを落ち着けようとザンブリと潜り顔を上げたとたん、ブラザーズがサウナを出てこちらに向かってきたのを目にしてしまったのです。

しかたなく勝新座頭市のようにあらぬ方向を見ながら、浴場を退散した私なのでした。

 

別府のレトロ温泉

大分県の別府に竹瓦温泉という超レトロの市営の公衆浴場があります。

明治12(1879)年に作られた150年にもなろうとしている公衆浴場ですが、現在の建物は昭和13年(1938)に竹屋根葺きから瓦葺きに改築されたので、竹瓦温泉と名付けられたそうです。

私は10年近く前に訪れ、別府温泉の数ある名湯の中でも代表的な温泉と聞いてワクワクしてその豪華な歴史ある唐破風造(からはふづくり)の屋根をくぐり、入湯料を支払い建物に入りました。

温泉といっても大衆浴場なので丸い形の浴槽に10人も入れば満員位の大きさで、歴史を重ねた茶色の湯垢がびっしりと年季のはいったタイルに張り付いていました。

洗い場は少ししかないので桶で体を流して、浴槽に足を入れた途端に熱いのなんの、すぐ足を引っ込めてしまいましたが、我慢してなんとか湯船に体を沈めました。

しかし、熱湯のように熱くカップ麺のように3分はとてももたず、1分が限界で水族館のイルカのように飛び出してしまいました。

あとで分かったことは、平日は地元常連さんの為に45℃以上にしているというのです。

その後は館内にある名物の砂湯に浴衣を着て、砂かけさんというおばさんに黒い砂をたっぷりかけてもらい、先ほどの熱湯地獄の体を癒したのでした。