第198回 初任給のことなど 〜新入社員が定着するために・・〜
段ボール箱の中身を整理していたら、昭和50年代に働いていた社員の昇給や賞与の記録が出てきました。
ちょうど父が死去した年のもので、それから数年後に後を追うように亡くなった総務部長が手書きで几帳面に作成した一覧表です。
それは社員名だけゴム印が押してあり基本給や手当などの項目名や数字は全部鉛筆での手書きですが、パソコンがない時代だったのでそろばんで計算して一人ずつ書き入れたものなのでした。
30年以上前の資料なので記入してある名前を懐かしく眺めながら、部長亡き後に引き継いで私も経理の仕事をしたことを思いだしました。
経理の仕事は「売上管理」「仕入れ管理」「資金繰り」「現預金管理」「決算業務」「給与の管理」「資産管理」などがありますが、その中で社員にとって一番の関心事は「給与」であることは間違いないはずです。
その大事な給与、特に新入社員が初めて手にする「初任給」をメインとして取りあげてみました。
以前に社会に出たばかりの若い人に「1ヶ月にいくら貰っているの?」と訊くと、大抵は手取り額をいうことが多く、仕方がなく「基本給や手当も含めた額面はいくらなの?」と言い返すと怪訝そうな顔をするのです。
驚くことに自分で積み立てている財形貯蓄も引いた手取り金額を言い、給料が思っているよりも少ないと不満顔の若者もいました。
やはり、会社では新卒はもちろん中途で入社した社員にも、きちんと給与の中身について明細書を渡す前に給与辞令を渡して説明することが大事です。
会社によって手当や控除の名称の違いはありますが、支給欄には基本給や残業手当、職務手当、家族手当、通勤手当、場合によっては資格手当や皆勤手当などがあること、そしてそれぞれの内容を説明し確認させます。
さらに、控除欄には健康保険、厚生年金、雇用保険などに加えて所得税と住民税があり、法定福利費関係は本人の支払額以上に労働保険などを含め、会社が負担しているのだということをしっかりと話した方が良いでしょう。
ただしその中で住民税だけは、前年の所得に対して課税されるので、引かれるのは入社から2年目の6月からということを付け加えておきます。
例えば「あなたへの支給総額は20万円、控除額は3万円なので差引支給額は17万円ですが、健康保険等の法定福利厚生費は会社も支払っているので、あなたには23万円以上の人件費がかかっていることになります。」というように話し、その他の福利厚生費などを入れるとさらに会社の負担額は増えるのだということを説明します。
また、昇給時期などには全社員に対して、年1回は会社の給与体系や昇給について分かり易いように解説することも必要です。
昇給額が1万円であっても会社でそれを賄うにはその10倍20倍もの売上をあげなければならないことも理解してもらうようにします。
なぜなら利益は売上げ額の10%から20%が一般的、それが昇給額の原資になるので自分の昇給額だけの売上げ増だけでは、それを補填することはできないということも併せて話すようにしたいものです。
そういう機会を利用して、出来れば昇給と昇格と昇進との違いも1年に一度は全社員に啓蒙すると良いと思います。
昇給とは、社員の能力や勤続年数や年齢や物価により基本給が上がることで、正確には定期昇給とベースアップですが、中小企業では一緒にしているところが多いようです。
昇格とは、給与体系に職能資格制度として等級制を取り入れている場合に等級が上がる、例えば2等級から3等級になるなどの場合です。
昇進とは、人事評価により現在よりも高い役職に就く、つまり平社員から主任そして課長など上の職に就くことです。
4月は新卒社員への初めての給与の支払い月です。
初任給を受け取ったら必ず両親に食事やプレゼントをするように、入社前に約束し実行させることもお勧めします。
社会人なりたてのワクワクドキドキしている彼らには、しっかりと自社の給与のあり方を詳しく教えて、意欲を持って仕事に取り組み会社に長く定着する人財になって欲しいものです。