
第195回 「はやぶさ2、お帰り、そしてさよなら!」そして惟(おも)ったこと・・
米国のNASAの火星探査車が着陸し、その様子がSF映画の映像を見ているようで大変にワクワクしました。
日本でも昨年12月、小惑星探査機はやぶさ2はカプセルを地球に送り届けた後、わき目も降らず次の目的地へと100億kmの距離を11年かける壮大な旅に再び出かけました。
2018年5月には「頑張れ!はやぶさ2号!!」と題したブログを発信し、オリンピックの年なのでその勢いを借り「日本の選手同様、はやぶさ2も応援しましょう」と書いたのですが、まさか2020年がとんでもない年になるとは全く思ってもいませんでした。
現在から5年10年と経った頃にコロナ禍の2020年は何か良いことがあったかなあ、と思いだした時に真っ先に「はやぶさ2の大成功」をあげる人が少なからずいるのではないでしょうか。
はやぶさ2帰還のニュースを見聞きし最初に思ったことは、この偉業はコロナ禍の中でも一筋の光明を見出したようで気持ちが高揚しましたが、それとは裏腹に同じようなプロジェクトが将来も発展継続して進んでいくのだろかと心配になりました。
はやぶさ2は開発から帰還後の2021年までのミッションで、12年間の総事業費が289億円、年間にすると20億円から30億円の予算です。
数か月で500億円の予算だったというア○○マスクと比べると、圧倒的に少ないということがよくわかりますが、それでも今回も成功し日本中が沸き返ったことを踏まえて、今後の予算は相応の額が組まれるものと思っていました。
ところが、関連した宇宙のプロジェクトの政府予算は、毎年少なくなっており関係者は気をもんでいるそうで大変に残念なことです。
ましてや現在進行形のアメリカの小惑星探査プロジェクトは、日本の10倍もの規模の予算をかけてやっているので、今後も日本の優位が保たれるのかは風前の灯火です。
はやぶさ2で考えたことがもうひとつありました。
冒頭に挙げたように6年かけてミッションをやり遂げたはやぶさ2は、なんとその倍近くの年月を費やす過酷な大航海に向かったということに驚きました。
さらに旅の途中の2026年には、はやぶさ2は別の小惑星2001 CC21をも観測するミッションも抱えているようです。
目的地の998 KY26は直径30m、約11分で自転しており、2031年7月に到達する計画ですが、イトカワが535m、リュウグウが900mの大きさで、比較すると大変小さい小惑星なのでさらにハードルが高い目標になっています。
このミッションを与えられたはやぶさ2を、名古屋大の渡辺誠一郎教授は「ラグビーW杯で2回のトライをあげた選手がフィギュアスケーターに転向して10年後に五輪を目指すようなもの。」と話しています。
なぜそんな小惑星に行って観測するのかというと、このサイズの惑星は100年から200年に一度、地球に落下する恐れがあるというのでその対策を考えるためだそうです。
過去にはロシアで1908年に直径40mの「小惑星」が落下し、2000平方kmに渡り木々がなぎ倒された大爆発があり、2013年には直径10mのロシア中部のチェリャビンスクへ落下し1000名以上が負傷したこともありました。
「円満定年退職した人が一念発起して、それまでの業績と同じかそれ以上の成果を上げるようなもの。」とはやぶさ2を擬人化して考えたら、ある2人の経営者を思い浮かべてしまいました。
一人目はQBハウスの創業者 小西國義氏で、55歳の時に畑違いのカットハウスを起業し、全国に500店舗以上展開してシニア年代の人達を驚かせました。
私も講演を聴講したことがあり、そのエネルギッシュな姿に勇気づけられましたが、残念なことに小西氏は昨年の7月に79歳で逝去されたそうです。
また二人目としてはカーネルサンダース氏で、世界中で知られているケンタッキーフライドチキンの創業者ですが、彼はなんと65歳でフランチャイズ事業を展開し73歳の時には600店舗のFCにしたのです。彼も90歳に白血病で逝く前年まで世界中を飛び回ったそうです。
両氏とも年齢でいえば第2の人生ですが、そんなことには躊躇せずに自分の想う目的に邁進した姿勢は、まさにはやぶさ2とダブるのではないかと思ってしまうのです。
「はやぶさ2、お帰り、そしてさよなら!」と心の中で言いながらいろいろなことを考えてしまいましたが、片道だけの燃料を抱えて帰らぬ旅に向かったはやぶさ2、あなたの10年後のその成果に傘寿を超えた自分が果たして祝うことができるのかと思うと、少しだけ心がざわめいてしまうのです。