第183回 「代替」を考える 〜歯磨き粉は薬?〜
だいぶ前に聞いた話しですが、ある探検隊がアマゾン奥地で人と接したことがない部族と遭遇した時のことです。
探検隊の一人がその部族の住民に歯磨き粉を舐めさせたところ、高熱で元気のなかったその住民の体調が回復しました。そして試しに皮膚病の住民に歯磨き粉を塗ったら、これも治ってしまったというのです。
真偽は定かではありませんが、その部族は薬というものを一度も使ったことがないので、歯磨き粉の成分が万能薬のような役割をはたしたようです。
現在コロナのワクチンと治療薬の開発が全世界で取り組まれていますが、治療薬についてはエボラ出血熱やインフルエンザや気管支炎や膵炎など既存の病気向けの薬が、効果があるのではと検証されています。この事例も本来の症例向けの薬が、全く違う新型コロナに効くかもしれないという代替の治療なのでしょう。
家庭内で使う万能薬といえば、昔は萬金丹で今は正露丸が丸薬の代表格です。特に正露丸は、「下痢、食あたり、はき下し、水あたり、くだり腹、軟便、虫歯痛」と守備範囲が広いようです。正露丸を製造した当初は虫歯痛を想定していなかったはずなので、これも代替の治療ではないでしょうか。
塗り薬としての代表格はオロナイン軟膏で、「にきび、吹出物、はたけ、やけど、 ひび、しもやけ、あかぎれ、きず、水虫、たむしetc.」と肌にはほぼ万能です。素人の目から見ると「にきび」と「やけど」と「水虫」は全く別物のような気がするので、これもやっぱり代替治療なのでしょう。しかし、気をつけたいのがオロナインは「塗る消毒薬」なので虫刺されには効能がないらしく、毒虫などにやられた後に塗ったからといって効き目はないようです。
シンガポールに行くとお土産として重宝なのがタイガーバームですが、この塗り薬も万能の効果がうたわれています。ちなみに赤と白の2種類があり、赤は肩こり、筋肉痛、関節痛、背痛、関節炎、リューマチ、座骨神経痛、捻挫に効き目があるとうたっています。白は頭痛、鼻づまり、虫さされ、かゆみ、やけど、鼓腸に効能があるそうで、2つ揃えておくと鬼に金棒のようです。それでも違いをよく理解しておかないと、とんでもない事になりかねませんので、赤白の選択は大切です。
日本にもタイガーバームに匹敵するような、メンソレータムとメンタームという清涼感のある塗り薬があります。この2つの薬は各々ロート製薬と近江兄弟社が販売していますが、効能は少し違うようなのでよく確認して使用したほうが良いでしょう。
でも、もしかすると今まで取り上げた薬は、アマゾンの原住民には万能の薬になるのかもしれませんね。
風呂場でシャンプーを使う時も私は代替行為をしています。初めに頭をシャンプーで洗い、その泡を顔面や首まで広げていき、それでも頭には大量の泡があるのでそれをすくい取り全身にまんべんなくくっ付け、洗体タオルで体をこするという段取りです。最近のシャンプーはあまり目に沁みませんし、泡を落とすことも一気にできるので、時間と水資源も有効活用となります。
ただ、今は全身シャンプーとかオールインワンシャンプーとかいう製品が出回っているので、今度そういうのも試してみたいと思っています。
私は鼻がつまる時があるのでたまに点鼻薬を使いますが、先日夜中に鼻の穴が両方つまってしまい息苦しくて起きたのですが、その薬がきれていて困ってしまいました。そこで、枕もとをごそごそしていたら、清涼系の目薬があったので「目と鼻は通じている」ということを思いだしました。
ほんの一滴の目薬を鼻の中に垂らしたところ、鼻がバカッと貫通しスースーして解消してしまったのです。常用は良くないけれども、緊急時には良いのではと我ながら自画自賛した次第です。
製造関係の業務改善の4原則に、排除、結合と分離、入替えと代替、簡素化がありますが、「代替」もその中に入っています。かように代替は多様な分野で活用されています。
今回は例として薬関係を取り上げましたが、仕事や日常生活でもどういうものが代替としてできるのかを意識的に取り組んでみると、案外と面白い結果が得られるかもしれませんね。