第179回 クルーズツアー乗船記 〜食レポ・・・?〜

第179回 クルーズツアー乗船記 〜食レポ・・・?〜

 大型客船のクルーズツアーが、コロナ関連のダイヤモンドプリンセス号のニュース以来、恐ろしい乗り物の代名詞になってしまいました。旅好きの私は2015年に初めてクルーズ船のツアーに参加してから、その快適さとコストパフォーマンスでファンになっていたので、非常に残念な思いです。

 そこで今回は大型客船の旅とはどういうものかを、私の少しばかりの経験でご紹介してみます。

 

 私が初めて大型客船に乗ったのは20年位前に北欧視察をした時に、シリヤラインというフィンランドのヘルシンキからスウェーデンのストックホルムまで1泊2日で航行するルートで、ツアーというよりはホテルの代わりに船に一泊だけいう感覚でした。

 それでも5万トンクラスで乗客が3千名乗ることができるその船内に入ったとたん、まるで田舎から初めて大都会を訪れた修学旅行の生徒のように、そのあまりの内装設備の豪華絢爛さに唖然呆然してしまったのです。

 

 その後に乗ったのはそれから十数年後で、日本国籍の3大クルーズ客船であるパシフィックビーナス、日本丸、飛鳥Ⅱに3年連続で乗船してみました。ほとんどが国内の1週間以内のクルーズですが、船内ではどの船もこんなにも・・と思うような企画やサービスが目白押しで、退屈することはありませんでした。

 

 寝ている間も時速30km、24時間で800km位の距離を航行するので、海外の旅に多いバスでの遠距離移動がないので大変に楽なのです。普通の海外ツアーでは1日の移動が500kmで10時間位乗ることも珍しくなく、中高年女性のツアー客がトイレを我慢して瀕死憤怒汗だくの形相で歯を食いしばっている様子も目にすることもあります。

 

 さらに、一般のツアーに比べると強みがたくさんあります。毎日の荷物の出し入れの手間がかからない、寝坊しても他人に迷惑をかけない、移動時のトイレは心配無用なので前日に少しくらい深酒しても大丈夫、食事の時間がある程度マイペースでとれる、風呂は毎日大浴場に入れる、運動や散歩もできる等々です。

 

 そして旅には欠かせない楽しみな食事についてですが、驚くことに1日中いつでもなにかしら食べることができるので、前記のクルーズ船の実例を一つ紹介します。

 

 もちろんメインとしては3回提供され、朝食はバイキング式、昼食は日替わりの和洋中があり蕎麦や鰻重もでたりします。夕食のコース料理は飽きられないようにメリハリがあるメニューで、まるで毎日違うレストランに行って食事をする気分になります。

 

 それらのメインの食事の他になんと5回も食べるチャンスがあるのです。まず朝の6時からモーニングコーヒータイムという時間があり、飲み物の他にぺストリー(パイやタルトやケーキ)が提供されるのです。

 さらに、9時から11時迄ティータイムではデニッシュやクッキーが用意されており、そして13時半から20時までグリルコーナーがオープンし、ハンバーガーやスパゲティー、ラーメン、アイスクリームなども食べ放題です。

 夜になると17時からライトスナックという軽食コーナーも20時過ぎまでやっています。とどめとしては、レイトナイトスナックという夜食が23時から24時半まで提供されており、おにぎりやお茶漬けやうどん蕎麦なども日替わりで並んでいます。

 

 これら8回もある食事軽食が、アルコール以外はいくら食べても飲んでも無料なのです。クルーズ料金に含まれているので後でどこかの旅館のように、請求書が部屋にまわってきて目の玉が飛び出ることもないのです。

 

 全部に挑戦したら、満漢全席の気分やフードファイターになったような気持になるかもしれません。ただ提供された飲食物は、原則として部屋に持ち帰ることは禁止されているので、タッパーやビニール袋を持ちこんでも徒労に終わることになります。

 

 旅行に行くと国内海外に関係なく、1日に1万歩以上歩くことが珍しくありませんが、船内だけの生活であまり運動もせずに、いくらでも食べられる一流レストランの味を「うまい、安い、早い」感覚で摂取してしまったら、アラビアのハーレムの王様のようになってしまいかねません。

 

 日本のクルーズ船は乗務員の8割位は外国人で、その中でも圧倒的にフィリピン人が多くレストランのスタッフやベッドメーキング、施設の保守保全、エンターテイナー等々活躍しており、彼らはいつも微笑みを返してくれました。

 

 コロナの影響で世界の客船は、各国の港で巣ごもり状態になっているようです。船舶乗務員数は全世界で200万人以上いますが、今でも数十万人が海上に取り残されていているという報道がありました。

 特にフィリピンのマニラ湾ではクルーズ船が20隻以上待機しており、客は乗っておらずフィリピン人スタッフが6000人以上、上陸できずにいるということです。

 

 少しでも早くこういった状況が良くなって、乗客と乗員が笑顔でクルーズ船に乗って世界の海原を巡る世の中になることを心から願っております。