第170回 昭和回想録その17 〜映画の想ひで〜

第170回 昭和回想録その17 〜映画の想ひで〜

 ナイトショーの映画に行ってきた、といっても時間は夜の8時台始まりで、オールナイトではなく終演が10時半の時間帯である。

 邦画であったが内容はなかなかに秀逸な作品で、2時間のあいだ眠気も催さずに見ることができた。

 ただ驚いたのはその映画の観客は、私たち二人だけだったのである。300人以上は入れるシアターだったが広い館内を最初から最後まで貸し切り、まるでアラブの大富豪がマイシアタールームで映画の鑑賞をしている気分であった。

 映画を観終わった後に、コロナの影響がここまで来たのかと思うと少し背中がうすら寒くなってしまった。そして今や米国では映画館が全部閉鎖されてしまったらしく、日本もそうならないように願うばかりである。

 

 昭和時代の映画事情を懐古すると劇場での映画鑑賞は、今の時代とはまったく別物であった。

 映画館は封切り劇場と二番劇場があり、三番劇場があった記憶もある。現在のように繁華街やモールに立地するシネマコンプレックスではなく、市内の各所にある商店街や住宅地にも映画館が営業していた。

 町の中心部の映画館は新作つまり封切りを上映する所が多かったが、そこの上映期間が終わって次に時期をずらして興行されるのが二番劇場であり、その多くは3本立てだったが、当時は一つの映画が1時間位なので時間の長さは全く気にならなかった。

 

 封切り劇場は2本立てが当たり前で、例えば東宝であれば加山雄三の若大将シリーズとゴジラシリーズの2作品、東映であれば高倉健の網走番外地シリーズと千葉真一の黄金バットなどの組み合わせである。

 他にも日活や松竹や大映など邦画全盛の時代で、洋画を上映する映画館は少なく大作の「ベンハー」や「十戒」や「地上最大の作戦」などが70ミリ専門劇場で封切られていた。

 こういった対策はほとんどの上映時間が3時間前後あり、必ず半分くらい上映されると「休憩」というテロップが映されトイレタイムを設けていた。

 

 昭和30年前後は白黒の映画も多く、全編カラーの映画の場合は「総天然色」と誇らしげに映画のポスターに記してあった。

 

 当時は今のように座席指定というシステムがないうえに映画が複数本上映されていたので、次の映画の合間に売り子が木箱を首から吊るして、軽食や菓子、アイス、飲み物など座席の間を売り廻っていた。

 館内はもちろん喫煙OKなので、スクリーンを映し出す光には絶えず紫の煙が漂っていて、現在のライブ会場のスモークの演出さながらでもあった。

 また、入れ替えなしの上映なので気に入った映画であれば何時間でもいることができ、人気の映画の立ち見は当たり前、通路に腰かけている客も珍しくなかった。

 上映方法は今のようなデジタル方式ではなく、銀塩フィルムを映画用の映写機で投影するので、フィルムが切れて画面が真っ暗になるのもそんなに珍しくなく、案外と静かに再開されるのを待っていた。

 ただ時代物で悪徳役人に殺されそうになる主人公の相方を、正義の味方の鞍馬天狗などが白い馬に乗って駆け付ける場面になると、場内から一斉に拍手が沸き上がり中には声援までする大人もいた。

 

 テレビがあまり普及していない頃には、映画館では少し古い10分位の時事ニュースが独特のナレーションで上映されていた。

 高校時代には映画が大好きだったので3日で15本観たことがあるが、同じニュースを何度も見ることになり辟易したことを覚えている。

 私は当時に映画のジャンルは、西部劇、コメディ、ホラー、SF、恋愛等々なんでも観ており、恋愛映画の後は二枚目気分、やくざ映画の後は肩をなびかせ、ブルースリーの映画の後はアチョーッとなって映画館を出て行くのは当たり前のようになっていた。

 

 真面目だった私、成人映画は一度も見たことがなかったので、高校の卒業式の帰りに友人と連れ立ってその専門映画館に向かった。

 当時のその手のポスターは、今であれば絶対に街角に掲示することができないくらいの扇情感丸出しのリアルなものであった。

 心臓の高鳴りとせつなくいやらしい期待を胸に抱いて、震える手で窓口にて入場切符を買い「鑑賞」におよんだ。

 50年以上も前のことなのに、今でもその映画のタイトルを覚えているのは、私の記憶が良いのかどうなのか・・

 

 清潔で座り心地が良くポップコーンとコーヒーの香りがする現在の映画館、それに比べて昭和時代の映画館は煙草や食べ物や便所の臭い、人いきれやナフタリンやポマードの臭いなどが渾然一体となって、それが私の中の昭和の香りのひとつとして記憶されているのである。

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