第164回 涙は百薬の長・・・

第164回 涙は百薬の長・・・

 昨年に9年近く飼っていた愛犬が亡くなり、数年ぶりで涙を流してしまいました。喜怒哀楽につきものの涙、齢を重ねるにつれて「涙もろく」はなってきたが、涙ぐむことはあっても頬を伝って流れるような涙を最近はめったに流すことはありませんでした。

 それでも、さすがに毎日一緒に暮らしていた「家族」を亡くしたという出来事にはついポロリとなってしまったのです。

 

 人が生を受けて最初に流す涙は赤ん坊が「おぎゃあ~おぎゃあ~」と泣きながらの涙と思いがちですが、生まれたばかりの赤ん坊は涙管が十分に発達していないので、実際には涙は数週間しないと出ないそうです。

 

 それでは赤ん坊は生まれた時になぜ泣くのかというと、肺の中の羊水を吐き出して肺呼吸をするためだからというのが本当の理由だそうです。

 私的には、赤ん坊はこの世に出てきて苦労する人生を考えると、それが悲しくてつらくて「泣く」という話しの方が面白いと思っています。

 

 今の時代は涙をうまく出せないために、心を病む人もいるというので「感涙療法士」という「士業」もあるということを知って興味を持ったことがあります。

 

 感涙療法士は感動感激をしたことや悩みや泣き言を話してもらい、それによって涙を流しストレスを解消させて心の健康をサポートする人で、企業や学校、医療施設、福祉施設でも活躍しているようで、その療法は「うつ」にも有効ということです。

 

 ところで人はなぜ涙を流すのでしょうか?

 

 人間は心身ともに成長するにつれ、経験や体験を重ねるとともに様々な涙を流すようになり、その涙には3種類あるといいます。

 

 一番目の「情動性の涙」は感情の起伏によって流れ出る涙で、悲しい時とうれしい時の涙はさらりとしていて量が多くあまり味がしないようです。又、怒った時や悔しい時は交感神経の作用でナトリウムや塩素が多くなり、涙の量は少ないが塩辛いといいます。感情が高ぶると血流が増えるので、それが涙となって出てくるのだそうです。

 

 二番目の「基礎分泌の涙」は目の健康を保つために、乾かさない、養分を補給する、潤滑油などの役割を担っているのだそうです。

 

 三番目の「反射性の涙」は異物が目に入った時や、玉ねぎの刺激物の硫化アリルなど刺激物から目を保護するために流れ出るのがこの涙だそうです。花粉症になって涙が止まらないのもこの涙なのでしょうか。

 

 映画やテレビを見ている時に感動や切ない気持ちになり、つい涙してしまいそれを抑えていると鼻水が出てくる時があります。涙は鼻涙管という器官を通り目と鼻から出るので、鼻から出ても涙と同じ成分なので汚いことはないようで、そして涙は血液から赤血球や白血球を除いたほかは、ほぼ同じ成分ということは良く知られています。

 

 涙には前述の「感涙療法士」のことでも触れましたが様々な効用があります。喜怒哀楽の感情が噴出して泣いた後にスッキリするのはその最大のもので、そういう場面での涙は体内のストレスホルモンを吐き出すというのがそのような理由らしいです。

 おまけに涙を流すと、幸せのホルモンといわれるエンドルフィンの量が増えるので、それが気持ちをマイナスからプラスに変えていくといいます。

 

 結局涙を流すということは良い方向に行くということが圧倒的に多いので、よっぽどでなければためらう必要はないようです。

 

 それでも人前で泣くということは、「弱みを見せる」のではないか「女々しい」と思われるのではないかという気持ちが勝り、どうしても抑えてしまいます。

 

 特に女性の涙は相手に有無を言わせぬ特効薬なので、流された相手は大概困ってしまいます。男も一部の女性のように「演技の涙」や「ずるい涙」、「ウソ泣き」などができたらどんなに楽かもしれません。

 

 それでも、男は「鬼の目にも涙」をたまに流せば相手は安心し、それは「雀の涙」の量でも良いのです。ましてや、涙目など一度も見せたことがないとなると、「血も涙もない」と言われかねませんので、ほどほどの涙は、「百薬の長」かもしれません・・・