第159回 不思議な税金 〜年の瀬に考える〜

第159回 不思議な税金 〜年の瀬に考える〜

年末が近づくといつも頭に浮かぶ漢詩があります。

 

年年歳歳花相似 歳歳年年人不同

(ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず) 

 

来る年も来る年も花は同じ姿で咲いている。

しかし、それを愛でる人は毎年毎年同じ姿ではいられない。

 

 そして企業の経営者は12月というと、賞与や年末の支払いや税金が頭に浮かぶと思います。

「税金」と聞くとあまり良い気持になる人はいないでしょう。背筋がぞっとしたり、鳥肌が立ったり、中にはムカつく人もいるかもしれません。

 

 今年は消費税も上がりその複雑さと煩わしさで、会社はもとより会計事務所では事務員を増員して対処しなければならず、悲鳴を上げているという話しも聞こえてきます。また12月や3月の決算を控え、戦々恐々としている会社もあるかもしれません。

 

 我々が当たり前に払っている税金はいろいろな種類があります。又、世界には日本にはないユニークな税金もあるようですが、日本にも「二重課税」という不思議な税金があります。

 ガソリンはその典型的な例なのでよく取り上げられるので、周知の方も多いと思います。ガソリン1リットルにはガソリン税3種類で56.6円がかけられており、本体の価格に加算されています。更にそのガソリン税も含めた合計額に消費税がプラスされる、つまり税金に税金が加算されているということです。

 

例)ガソリン価格150円、20ℓ購入で3,000円の場合の内訳

  ガソリン税3種 56.6×20ℓ=1,132円

  消費税 (本体価格1,595+ガソリン税3種1,132)×10%=273円

  本体価格1,595+ガソリン税3種1,132+消費税273=3,000円

 

 ガソリンの場合、税金がなんと47%と半分近くを占めているのです。

軽油の場合の税金はもっと安いですが、我々が車を走らせるほど税金を納めているということになります。

 

 酒税で一番税率が高いアルコールはビールの40%以上で、日本酒やワインは20%以下ですが、やはりダブルで課税されています。

 

 煙草にかかる税金は更に高く60%を上回っていて、日本での税率としては一番高いのではないでしょうか。他にも2重課税としては、自動車取得税やゴルフ場利用税もあります。

 

 国や地方自治体から見た好ましい納税者の姿は、「ヘビースモーカーでビールを毎日飲み、ウィークデイーには片道1時間もの距離をものともせずに、ゴルフ場に頻繁に通う人」ということになります。

 

 世界に目を向けると興味深い税金があります。

 

アメリカの「肥満対策税」

 アメリカの特定の州で導入されており「ドーナツ税」「キャンディー税」「ソーダ税」、「ジャンクフード税」などという税金です。おデブさんが多い肥満大国のアメリカならではの税金で、砂糖を多く使った甘い菓子やソーダ類、カロリーが多い食べ物、そして「ジャンク」というガラクタという意味の体に良くない食べ物などにかけられています。

 

イタリアの「ポルノ税」

 情熱の国のひとつであるイタリアでは、その過激すぎる情熱を抑えるためでしょうか「ポルノ税」というものがあります。いわゆるエッチな雑誌やDVDや映画などに25%の税金が課せられています。その税金は年間300億円にもなり、財政状態の良くないイタリア政府のちょっとした虎の子になっているようです。日本も是非取り入れたらいいと思いますが、どの位の税額になるのでしょうか。

 

オーストラリアの「学位税」

 オーストラリアではほとんどが国立大学なので、その授業料は国が負担しておりその学費の後払いを卒業後に負担させる税金です。もちろん、一定以上の収入を得ていることが条件で、3〜6%の範囲で課税されます。学生は親に負担をかけず、自分も過度なアルバイトをしなくとも大学で勉強ができるので、大変よくできた徴収システムと考えます。

 

欧州の「犬税」

 アムステルダムの街中を歩いて犬の糞の多さに閉口したことがあります。その対策のためでしょうか、ヨーロッパの国々では犬に税金が課せられ、掃除の費用に充てられます。そして、この税金は犬を安易に飼うのを防ぐことや生き物を飼うということはどういうことかを自覚させるという意味もあるそうです。

 昭和の時代は日本にも年間300円ですが、「犬税」が地方自治体によってあったようです。

 

日本の「入湯税」

 恐らく日本にしかないだろうというのが「入湯税」です。温泉に入る場合に課せられる150円の税金で建前は「環境衛生施設や温泉施設の整備、観光の振興」に使われるそうですが、その年間200億円以上の税金はどうなっているのかよくわかりません。

 

 他にも、中国の「月餅税」という税金は、旧正月に会社が社員にお祝いとして支給する月餅に現物所得として課税するものもあります。

 ドイツでは、飲食店以外は日曜日に営業すると課税されるという「営業税」という税金があり、さらに24時間営業は許可されていないので、労働生産性が日本よりもはるかに良いのかもしれません。働き方改革の制度は、こういう課税方法も見習うことも大事なのではないでしょうか。

 

 政府の2020年度の予算は税収が63.5兆円に対して、予算が102兆円と相変わらずの借金経営です。

 先の見通しもないのに闇雲に課税するだけでは借金地獄がいつまでも続くのではないでしょうか。今の日本は徘徊する老人が目標もなく、どこに行くのかわからないのと同じです。

 会社が中長期計画を作るように、国も借金を解消する計画を立て目標に向かって進んでほしいものです。