第151回 がんのことあれこれ 〜余命宣告と早期発見など〜

第151回 がんのことあれこれ 〜余命宣告と早期発見など〜

 1年半前に我が家の愛犬が悪性リンパ腫と診断され、治療をしなければ1ヶ月くらいしか持たないと獣医に宣告されてしまいました。首の付け根の所にグニョッとしたゴムのようなしこりを見つけ、動物病院に慌てて駆け込んだらそう言われたと妻がガックリしながら帰宅したのを今でも覚えています。

 治療しても1年生きることは難しいかもとれないとの余命宣告でしたが、ワン公は今でも一進一退ながらも、食欲旺盛で生きています。

 もちろん、犬の病気と人間のそれを比べるのは不謹慎かもしれませんが、ワン公の治療薬は人への抗がん剤と同じものと獣医に言われたので、あえて取り上げました。

  

 余命宣告とはあとどの位生きられるのか、どの位の年月で亡くなってしまうのかと思ってしまいますが、実はそういう単純な意味ではないようです。

 そして余命宣告があと1年といわれた場合には、その前後の数か月でほとんどの人の寿命が尽きてしまうと思いがちです。

 

 100人の人が「余命はあと1年位です」と言われたとします。それはそのうち1年後に亡くなるのは50番目の人であり、残りの人は2年後あるいは3年後かもしれないということだそうです。

 病気の種類や本人の体力や進行度、治療の適合性など様々な要因もあり、実績データをもとに医師は苦渋の選択をして患者に告知するのですが、積極的にその宣言をすることはあまりないようです。

 余命宣告の期間よりもあまりに早く亡くなったとしたら、遺族が治療方法に疑問を持つかもしれませんし、宣告期間よりも長く生き延びていたらその患者本人がいつまで自分は生きられるのだろうと毎日死の恐怖と向き合うようになるかもしれません。

 病気によっては余命宣告が3年の場合でも、5年以上の生存率が30%以上というのも珍しくないそうです。

 

 現在は日本人の2人に1人ががんになり、死因の3割ががんということで男性の54%、女性の41%ががんになるということです。あきらかに男女の平均寿命とほぼ同じような傾向ではないでしょうか。

 

 がんにはいろいろと原因がありますが、私の親族に多い糖尿病との関連はどうなのかと調べてみて初めてその因果関係を知って愕然としました。

「糖尿病になるとがんになる確率が2倍になる」ということです。

 日本では6人に1人つまり国民の2000万人以上が糖尿病とその予備群と推計されています。

 日本糖尿病学会と日本癌学会による10年間の追跡調査の結果では、「糖尿病患者の場合、糖尿病ではない人と比べて大腸がんは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍もがんを発症するリスクが高い」と報告されました。

 糖尿病になると細胞を増やすインスリンが多く分泌されるため、がん化になりやすくそして細胞も増殖してしまうのではないかと推定されているそうです。

 さらに、糖尿病になると免疫力が弱くなるので、特定のがんになりやすいという話しも大学の研究者から聞いたことがあります。

「糖尿病は万病のもと」というのは疑いがないようです。

 

 抗がん剤を投与すると髪の毛や体毛が抜けてしまうという副作用があることは、ほとんどの方が知っていると思いますが、それはなぜなのでしょうか。これもセミナーで聴いたのですが、がん細胞は髪の毛に成分が似ているのでがん細胞と一緒に攻撃されてしまい脱毛してしまうそうです。ただ、毛髪はターンオーバー(新陳代謝)をするので、治療が終わるとまた再生するので心配はないという話しでした。

 

 がんを早期発見するには定期健診やがんマーカー、PET検査などがありますが、その他にも最近では様々な方法で事前に見つけることができるようになりました。

 

 米国人女優のアンジェリーナ・ジョリーがDNA検査の結果をもとに何でもない乳房や卵巣を切除したことにショックを受けた人は多いと思います。半分以上の確率でがんが発症するということで手術をしたそうですが、彼女は映画の主人公同様の強い意志の持ち主ですが、私たち常人にはなかなかそこまで踏み切ることができない人が多いのではないでしょうか。

 

 最近では「線虫が癌を発見」というニュースがありました。ベンチャー企業のHIROTSUバイオサイエンスという会社が、1ミリほどの小さい線虫に一滴の尿の臭いでがんの有無を発見するという方法を発見し、その的中率は85%ということです。15種類のがんに反応するそうで、その中には発見が難しい膵臓がんなども含まれており、検査費用も安く2020年度から実用化も始まるという内容です。

 

 さらに山形県にあるサリバテックという会社は「唾液でがん検査」というがんのリスクを早期発見する技術を開発しました。0.1CCの唾液で5種類のがんのリスクがわかるそうでCTなどと検査を併用することにより、格段の早期発見につながると期待されています。

 

 がんは「近い将来」には予防や治すことができる病気になるそうですから、その「近い将来」までなんとか健康で少しでも長生きしたいものです。