第150回 組織はシンプルに 〜巡査部長と支店長代理はどの位偉いのか?〜

第150回 組織はシンプルに 〜巡査部長と支店長代理はどの位偉いのか?〜

 テレビの刑事ものを見ていると「警部補」とか「巡査部長」という役職が出てくる。

 ドラマの筋を見ていると何となくどちらの階級が上なのかわかってくるが、その役職名だけではなかなか判断に苦しんでしまう。おまけに警察庁と警視庁の違いもよくわからない。

 20年も続いている刑事ドラマ「相棒」の主人公である水谷豊演ずる杉下右京は、階級でいうと警部で係長クラス、今の相棒の冠城亘は巡査なので3段階下の一般社員である。

 番組当初の相棒の亀山薫は杉下よりも2段階下の巡査部長なので、一般企業でいえばリーダー相当の役職ということになる。

 事件が起きると事あるごとに右京らを邪魔者扱いする伊丹刑事と芹沢刑事は、亀山と同じ巡査部長なので杉下よりも2段階も下位の役職なのだ。部長というと一般の会社ではどうしても管理職のトップクラスと誤解してしまう。

 

 同様に銀行員に名刺を渡されると支店長代理という肩書を見ることがある。主婦などはこの肩書によく惑わされ「この人は若いのに支店長の次に偉い人なのね。」と勘違いし、「こんなに偉い人が対応してくれるのなら・・」と投資信託を即、申し込んだりするかもしれない。

 

 銀行の役職は一般的には次のようになっている。

 

一般行員 →主任 →係長 →支店長代理 →課長 →次長 → 副支店長 →支店長

 

 従って、支店長代理は20代でも少なくない行員がその役職についている。もちろんこの順位は銀行ごとに違いもあり、主任のすぐ上位が支店長代理の場合もある。

 

 警察に話しを戻すが、警察庁とは「日本の行政機関のひとつで、内閣府の外局として内閣総理大臣の下におかれる国家公安委員会の特別の機関」となっており、警視庁とは「東京を管轄する日本最大の警察組織」なので、東京都以外は警察庁となっている。

 そしてその階級は、「警察庁長官、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査」であり、民間会社の場合にすると警視以上が管理職で警部が係長、警部補が主任という役職になるという。警視という役職が5つもあり、関係者でなければ理解記憶することはなかなか困難である。

 そして、警察庁のトップが警察庁長官であり警視庁のトップは警視総監となり、どちらが偉いのかというと警察庁長官に軍配が上がる。

 

 さらにややこしく難解なのが地方公務員の階級役職である。

 地方公務員の場合は警察の階級よりもさらに細分化されている。

 

主事 →主任 →主査 → 係長 →副主幹 →課長補佐 →総括課長補佐 →主幹

→室長 →課長 →次長 →部長

 

 この階級は主事、主任、主査と続いた後にその5段階上に主幹とあり、一般人には主事と主幹はどちらが偉いのかなどは、ほとんど理解している人は少ないだろうと考える。

 20代の公務員はほとんどが主事で、30代になると主任となりその後ほとんどの公務員が主査の役職に就く。

 そして係長になると部下を数名持つことになり、やがては課長補佐になるのが50歳前後だそうだ。

 課長補佐からさらに4段階ステップアップすると課長だが、数十人の部下を従える課のトップになる公務員はなかなか難しいようである。

 部長になると民間会社の取締役相当で、上位には行政のトップの副市長や副知事そして市長や知事しか存在しない。

 

 かように銀行や警察や地方公務員の役職はかなり複雑である。それでも、昔は民間会社もそういった組織にならっていたので、私のいた会社でも次のようにしていた。

 

一般社員 →班長代理 →班長 →係長代理 →係長 →課長代理 →課長 →部長代理

→部長 →工場長代理 →工場長 

 

 この組織を次のようにフラットに改善したのである。

 

一般社員(→リーダー) →ユニットリーダー →マネージャー →ゼネラルマネージャー

 

 職制を半分以下にして、代理は全部廃止し4段階だけにしたのである。()のリーダーは若い社員の力を見るために、その職場のまとめ役として1年間の任期である。

 リーダーは本人が断らない限り全員にやってもらう持ち回りの役なので役職の手当てはなく、正式には組織の中にも組み込まなかった。

 上記の組織は小刻みな昇格はない代わりに、職責が明確になり風通しは良くなったと実感することができた。

 ただ用心しなければならないのは、組織というのは自己増殖作用があるので、気付いたらいつの間にかまたいくつもの役職や担当が増えてしまったりする。

 

 いずれにしても自社の組織は、定期的にPDCA特にC評価とA改善は怠ることなく実施すれば、より良い組織に変えていくことができると考える。