第142回 企業は仮面ライダーになれるのか? 〜ChangeはChance〜

第142回 企業は仮面ライダーになれるのか? 〜ChangeはChance〜

 仮面ライダーがテレビに登場して50年近くになりますが、いざという時の変身の格好良さと、番組が変わるたびに新しいキャラクターが活躍することで、その人気は長く熱烈に支持されています。

 

 企業の変身(変革)というと富士フィルムが成功例としていつも取り上げられているので、周知の方は多いと思いますが改めて紹介します。以前は「富士写真フィルム」という社名でしたが、新規事業を展開するにつれ現在の社名に変更しました。富士フィルムは元の社名である写真事業はだいぶ縮小しましたが、現在は化粧品事業や医薬品事業、再生医療事業まで手掛けるようになり、売り上げの2割の5000億円まで事業を拡大しています。

 

 これほどではありませんがあまり知られていない紳士服業界の企業も、現在ではかなり「変身」しながら企業の維持拡大に努めています。

 その一つの例が、紳士服大手のコナカですが、飲食事業や教育事業のフランチャイズを展開していることを知っている人はあまり多くはないようです。

 

 実はコナカは、宮城県にある「とんかつ専門店かつや」の6店舗すべてを、グループ会社で経営しているのです。

 もちろん関東地方でも多店舗展開しており、その他にもフランチャイズとして「大衆食堂半田屋」、「からあげ専門店からやま」などの飲食店、さらに子供向けの英語教室の「Kids Duo」や「スペースクリエイト自遊空間」などの異業種にも事業を展開しています。

 

 同じ紳士服業界の「洋服の青山」も事業多角化に力を入れています。こちらも飲食店では「焼肉きんぐ」28店舗、「寿司しゃぶしゃぶゆず庵」11店舗のフランチャイズ展開や、リユース事業としてリサイクルショップ「セカンドストリート」などの事業も手掛けています。

 

 そして紳士服のAOKIにいたっては、全国に10数施設のアニバーサル・ブライダル事業や、宴会やカラオケができるエンターティメントの事業を大々的に展開しているのです。

 

 紳士服業界は以前から売り上げが頭打ちの業界で、レディー向けのビジネススーツに力を入れていると聞いたことがありますが、それもあまり効果がなかったようです。さらに、働き方改革が声高に叫ばれ、ホワイトカラーがスーツを着る機会が減少したことも水を差したようでした。

 

 このような業界の変化に対応するには、やはり仮面ライダーのような「変身」や、ぶりのような「出世」魚になるか、ヘビやカニのように「脱皮」しながら成長することを繰り返さなければならないのでしょう。

 

 変化はチャンスとよく言われますが、英語ではCHANGEはCHANCEと書きます。なぜそうなのかは下の文字を見てください。

 CHANGEのGはジャイアンツの頭文字で、Gの中にあるTはタイガースの頭文字です。以前は、読売ジャイアンツの最強ライバルは阪神タイガースでしたが、そのGの中にあるTをとるとCになりCHANGEはCHANCEになります。すなわち、変化はチャンスなのです。ほんの少しの事でも企業は変わることはできるという冗談ですが、少しでもなるほどと思って朝礼のタネにでもなれば幸いです。

 

CHAN G E → G  → CHAN C E

          ↓       

           T を外す

 

 いずれにしても変身変革する場合には、前記の紳士服業界のように全く違う分野に挑戦するよりも、立教大学名誉教授の山口義行先生が熱く語る「隣接異業種」による変身が成功する確率が高いと考えます。

 「隣接異業種」とは自社と全くかけ離れた業種ではなく、本業に関連した業種を新規事業として取り入れて展開する考え方です。

 中小企業サポートネットワークのスモールサンという会に入会すると、「隣接異業種」をはじめ、我々の企業にとって参考になる事柄がいろいろと学べますのでお勧めします。

 

 私が実際に見聞きした例では、眼鏡店が補聴器を扱う、靴屋がネールサロンを併設する、テント製造会社が野外イベントの企画もする、ガソリンスタンドがコンビニを併設する、理髪店が肩もみのマッサージもメニューに入れる、などがありますがこれらも隣接異業種なのではと考えます。

 

 また、自社の上流や下流の領域も視野に入れる方法もありだと思いますが、いずれにしても変身や変革をするには十分に視野を広げて実行していきたいものです。

 

 老舗と言われる企業は、何らかの変身を繰り返しながら脈々と経営が受け継がれており、その多くが「仮面ライダー企業」なのではないでしょうか。