第141回 仙台空襲で思ったこと 〜奈津子とB29〜

第141回 仙台空襲で思ったこと 〜奈津子とB29〜

 「奈津子・十一才の夏」という可愛らしい女の子の像が、仙台市戦災復興記念館に置いてある。この像は私の知人でもあり人生の大先輩であるブロンズ工芸職人のSさんが創作寄贈したもので、7月の仙台空襲前後になると時々思いだす。

 

 仙台空襲は1945年7月10日0時3分にアメリカ軍によって仙台市の中心部への大規模な空襲で、そのほとんどが焼け野原になった。1000名以上の死者・行方不明者を出したが、「仙台市戦災復興誌」では死者2755人とも記録されている。

 

 アメリカ軍は、空襲の前に「仙台よい町 森の町 7月10日は灰の町」と印刷したビラを空から撒いたという。それが本当ならもっと被害が少なかったのではと思うが、当時の世相状況ではなかなか避難しづらかったのかもしれない。

 

 B29の大編隊による空襲は123機におよび、焼夷弾の総投下量は900トン以上で11万個が投下された。

アメリカ軍は、前もって計画していた商業施設や民家が密集した爆撃地区の周りに油をまいて、それを燃え上がらせ人々が逃げにくいようにしてから、中心部に雨あられと焼夷弾を落としていったと聞いたことがある。

 このような民間人大量殺戮の作戦は大変に非人道的なやり方で、日本人だから黄色人種だからという理由でほとんど躊躇なく日本全国で展開されたようである。

 その真偽は定かではないが、仙台のように軍の施設が何もない地方の街にしては、尋常ではない被害が出てしまったのは確かである。

 

 前述のSさんは以前に会った時、私に以下のように当時のことを話してくれた。

 

 「その空襲の時、私は12歳だったが市内の一番丁に住んでいて警戒警報を聞き、自宅の防空壕へ入りました。しかし、そこでは危ないということで近くの片平丁国民学校まで走り、学校の防空壕に逃げることができました。夜空から爆弾が雨のように降ってきて生きた心地がしなかったのですが、2時間ほど空襲が続いた後に無事外に出てみたら、自宅の穴に逃げ込んだ人はみんな死んでしまいました。最近、仙台空襲で亡くなった人の名簿の中に私と同じくらいの “奈津子”という11歳の女の子の名前を見つけました。このような少女も死んでしまうという戦争について、皆に考えてほしいということでこのブロンズ像を作ったのです。」

 

 Sさんの語りは実際には正統純粋の仙台の方言なので、仙台弁のバイリンガルである私はSさんのしみじみと回想しながらの話す様子を見て、よりその体験に近づいたような気持になった。

 

 それよりもだいぶ前Sさんから、仙台空襲で亡くなった人のわかるだけの名前を全部銅板で作った、という連絡を受けたことがあった。名前を一個一個鋳型で作った表札状のプレートが1千枚近くあっただろうか、それを腐食しないようにコーティングできないかという相談だった。社内の担当者に事情を話したところ、作業の合間に何とかやってみますと来待良く引き受けてくれて、後日にSさんに引き渡すことができた。

 そのプレートは毎年7月になると市戦災復興記念館で、全部を床に並べて展示するので見ることができる。

 

 今年の3月の地元新聞に「墜落したB29米兵34人の鎮魂祈る 宮城・七ヶ宿で追悼式」という記事が載っていた。

 この追悼式については宮城県や山形県の人には「知る人ぞ知る」という終戦時のあまり知られていない出来事なのである。

 

 1945年3月10日、宮城県と山形県にまたがる蔵王連峰不忘山に、米軍の爆撃機B29が墜落した。それも3機が2時間くらいの間に次々と標高1,700mの不忘山に吸い込まれるようにして衝突し、米軍34人が命を落とした。テレビでもその特集番組を作り放映したのだが、大変にミステリアスな「事件」ということで一時話題になったようだ。

 

 墜落した原因は諸説あるが、その日は東京大空襲と同日の3月10日がカギのようで、東京から300km離れている不忘山は、時速500kmのB29であれば40分くらいで到着する。しかも、東京では高度約1,500mの低空からの爆撃作戦なので、爆撃時の熱風でレーダーが故障して蔵王まで来てしまい、山に衝突してしまったという説が一番納得することができた。

 そして、戦史上ではこの墜落の原因については、アメリカにとってもエニグマの一つとして記録されていると確信しているのである。

 

 6月23日沖縄慰霊の日から終戦の日の8月15日までに各地で様々な記念式典があるが、私たちは年に1度でもいいので「平和」について深く考えることが必要なのではないだろうか。

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