第133回 史上最強国際チーム 〜令和元年七福神詣り〜
日本には「七人の侍」や「荒野の七人」よりも団結力を誇る「七福神」という最強最幸の神様軍団がいる。日本の神様といっても、実は出身が異国である外国人が多いので、サッカーや野球以上に国際的なチームであることは「知る人ぞ知る」である。
七人の神様のうち日本出身は、恵比須神だけで大黒天、毘沙門天、弁財天はインド出身の神様であり、福禄寿、寿老尊、布袋尊は中国の神様なのだが、いつの間にか日本に帰化したようである。
令和元年の5月1日、かねてから廻ることを計画していた「奥州仙臺七福神詣り」をこの記念すべき日に御朱印帳を傍らに、神様たちと祀ってあるお寺をめぐって巡ってきた。
お寺はすべて仙台市内ということで、その日は自転車で廻り始め、最初は仙台の西方にある医王山鈎取寺の福禄寿詣でをする。福禄寿は幸福や長寿の神様で、お姿は短身長頭長髭で杖と経を持っている。承知2年(835)開山されたと伝えられているこの寺は、庭も本堂もなかなかの趣があり、親切な住職と話すこともでき、良い七福神巡りのスタートをきることができた。
御真言 オンマカシュリソワカ
*御真言は、願い事が届くためには、その神様の前で7回唱和することが基本
次に向かったのは、財運招福や立身出世の願いを成就させるという布袋尊が鎮座している南谷山福聚院、おおらかな顔と大きなお腹はいかにも願いを叶えるのではという親分的な神様である。このお寺は開創500年以上の歴史があり、山門や本堂もたいそう立派であった。祭事が近いうちにあるらしく、御朱印はあらかじめ書いていたものを手渡しされ、その威風堂々たる筆力に喜んだのだが、よく見ると令和元年5月1日がどこにも書いていない。その女性に「今日の日付がないのですが・・?」と言ったら「私が書きますよ」と言ってボールペンでグイッと「5/1」と書かれてしまったことは、ただ一つの残念な出来事であった。
御真言 オン マイタレイヤ ソワカ
3番目は400年以上前に創建された金光山満福寺の毘沙門天、ご本尊はお堂に祀られておりお姿を見ることはかなわなかった。こちらの神様は多聞天ともよばれる四天王の一神で、忿怒の相を示し甲冑をつけ右手に宝棒をもち、左手に宝塔を捧げる武神とのこと。その功徳は武道成就や降魔厄除というが、近年は子育ての神としても知られているようだ。こちらで拝受した御朱印は作務衣を着た中年女性が書いたのだが、多くの女性に信仰があるということを何となく納得してしまった。
御真言 オン ベイシラマンダヤ ソワカ
3つのお寺を自転車で20km近く廻ったら、少しへばってしまいあと3時間で4人の神様に挨拶に行かねばならず、いったん帰宅し車で廻ることにした。
4番目の天総山林香院の弁才天は七福神の中では唯一の女神で、恋愛成就、学徳成就、諸芸上達の神様、現在の女性がそれらに懸命なのはこの神様のおかげかもしれない。こちらの林香院では400年以前から八臂弁才天として此の地に祀られ、数多くの信者がいるという。
御真言 オン ソラソバテイエイ ソワカ
5番目に訪れたのが喜福山玄光庵、こちらには特に長寿の御利益があるという壽老尊が祀られている。壽老尊は寿老人ともよばれるが、福禄寿と姿かたちやご利益が似ていることもあり、同一神と考えられて外されたこともあるという少し気の毒な神様である。
御真言は オン バサラユゼイ ソワカ
6番目は大黒天が祀られている喜伝山秀林寺、到着は閉門間際の4時半ごろ、荘厳な山門の両側には仁王尊が屹立して睨みを利かせている。本堂の大黒天はその字のごとく黒光りしており、私の背よりもはるかに大きく左右に面を持ったその姿は、私たちが想像する袋をかつぎ帽子をかぶったあの大黒様とは大違いであった。五穀豊穣、商売繁盛、子孫繁栄、家内安全など数々の御利益をもたらすこの大黒天の黒は宇宙を表すということだそうだ。また、この寺は350年以上の開門以来、火災には一度もあったことはなく仙台市最古の木造本堂を有している。
御真言 オン マカカラヤ ソワカ
西に日が傾きかけた5時過ぎに訪れたのは、地元の老舗のデパートの屋上である。最後に残ったのは、ただ一人の日本国出身の商売繁盛の神様えびす様、文政2年1819年に得可主(えびす)の屋号の呉服商を創業して以来、信仰されており全国的にも珍しく屋上の神社に祀られている。7つ目の御朱印を店員らしき受付の男性にお願いし、お参りのあと受け取ったのはスタンプの組み合わせの御朱印であったのが少し残念ではあった。
御真言 エビス オオカミマモリタマエ サキハエタマエ
なんとか無事に令和元年「奥州仙臺七福神詣り」を終え、今年は七福神の功徳力で幸せいっぱいの年を過ごすことができることを確信してから、大事なことを忘れていたことを思いだしてしまった。
お参りと御朱印はしたのだが、一日で廻るということだけが頭にあり、なんと「御真言」を唱えることを忘れてしまったのである・・・