第132回 消費税を意識した賃上げ 〜定昇ベア込みなど〜

第132回 消費税を意識した賃上げ 〜定昇ベア込みなど〜

 4月といえば桜の季節と共に賃上げの時期、経営者は社員の給料をいくら上げたらいいのかと頭と胃が痛くなり、社員は自分の予想した位の賃上げになるのか胸騒ぎがする季節でもあります。

 特に今年の10月には消費税が10%になるので、その2%上昇分も賃上げに加味しておかないと、実質賃金が下がってしまうということになりかねないのです。

 そういうことで、今年は特に賃上げに気を使い慎重にならざるを得ません。

 

 テレビのニュースや新聞ではよく「定昇ベア込み」で今年の賃上げは〇千円と報道していますが、中小企業の多くはその区分があいまいで「今年は平均〇パーセント」などとしているのが多いのではないでしょうか。

 

 永年勤続の概念が無くなりつつある現在はこのような制度も見直されていますが、簡単に「定昇ベア込み」について説明します。

 

 定昇(定期昇給)とは、毎年一定の時期、一般的には4月に年齢や勤続年数や職能により、個人差はありますが賃金が上がる制度です。

 定期昇給は年功や職務や職能などを社員ごとに査定して、その社員が例えば仮に5段階評価あるとしてSABCDのどこに位置するのかを決め、賃金に反映させることです。

 又、ベア(ベースアップ)とは物価の上昇をにらんで社員全体の賃金水準を上げるもので、原則的には全員同じ金額になります。

 

 具体的には、基本給が25万円の給与の社員の場合、本給が20万円で加給が5万円とします。ここでいう本給とは基本給で等級と号俸で固定された額であり、加給はベースアップの実績額です。この社員の基本給が今年の賃上げで26万円になりました。この内、本給が208,000円で加給が52,000円なので定期昇給は8千円、ベーアップは2千円ということになります。これが、「定昇ベア込み」で1万円のアップということです。

 

 景気が悪い時期には、ベースアップをしない会社も多かったのですが、そういう場合は「定昇ありベアなし」なので、定期昇給という本人の努力部分のみの加算となります。ただ昨年までは景気が上昇しているということなので、当然ベアの積み増しもあった会社が多かったようです。

 

 2019年の賃上げ見通しは、東証第1部・2部上場クラスの主要企業は「6820円・2.15%」(定期昇給分を含む)と予測している調査機関があります。しかし、実際には幅があるようで中堅クラスの中小企業でも大企業よりは賃金ベースが低いので、パーセンテージ的には上昇する見通しです。

 特に今年は2%の消費税アップも控えており、さらに社会保険料も賃上げに連動してあがるので、実際は3%の賃上げでトントンでしょう。

 

 絞っても水が一滴も出ないような会社であれば賃上げが少ないのも仕方ないかもしれません。しかし、役員だけいつものように役員報酬や賞与を受け取り、社員は2%の昇給では実際の手取りは減ってしまい、社内での不公平感が出てしまいます。

 

 参考までに、現在の社会保険料は、健康保険料が10%、介護保険料が1.73%、厚生年金保険料が18.3%、その合計が約30%で会社と社員がほぼ折半しています。その他に雇用保険や労働保険もありますが、今回は入れておりません。

 2003年より、賞与からも社会保険料が引かれるようになったので、夏冬の賞与で調節することも難しくなりました。

 

 これまで挙げた事由もあり、経営者は消費税を意識した賃上げを今年はやってほしいのですが、残念ながらこの提案が遅すぎました。しかし、今回の消費税アップについては軽減処置もあるようなので、間に合わなければ来年の賃上げ時にでも、各種の手当も含め考えていただきたいと思う次第です。