第112回 目からうろこの相続税

第112回 目からうろこの相続税

「相続」関連のダイレクトメールが、最近頻繁に我が家に届きます。

 

 先日そういうセミナーの一つに出かけてみたら、「そんなことがあるの?」といささか驚いた内容を知りました。

 

 相続セミナーの講師が次のような事例説明をしていました。

「夫が亡くなって子供がいなかった場合に、財産は全部妻にはいきません。その夫に兄弟姉妹がいた場合には、妻には4分の3で残りの4分の1は兄弟姉妹のものになります。」

 夫婦に子供がいればもちろん2分の1ずつ、もし子供がいなくとも夫が亡くなったら、全部妻に財産がいくものだと思っていたのですが、そうではないというのです。

 そして、その解決策として講師はこう付け加えました。

 

「妻に財産を全部やりたかったら、遺言状を作っておくことです。」

 

 世間には子供のいない夫婦は10パーセント近くいるというから、奥さんにだけ財産を残してやりたいという夫は多いはずなので、そういう方は早めに遺言状を作っておいた方が良いようです。

 

 セミナーのあとに相続関連のことが気になり、「目からうろこ」でいろいろと解ったので事例を交えながら、私なりに作ったストーリーで解釈してみました。

 

例1

配偶者とその両親の場合

夫が天災で急に亡くなり、子供もおらず残された遺族は妻と嫁ぎ先の両親だけでした。夫には兄と妹がおり、兄嫁から自分の夫も法定相続人なので財産を分けて貰えるのではないかと主張された。

(結論)

配偶者に3分の2、両親それぞれに3分の1の半分の6分の1

両親が高順位の法定相続人なので、兄弟姉妹には相続されない

 

例2

配偶者と孫

夫が病死し夫婦の間には男の子供がいたが、その息子は結婚して孫ができた後に急死してしまい、息子の嫁は自分の実家でその孫を育てている。夫の両親のうち母は健在で嫁は一緒に生活をしている。

(結論)

配偶者に2分の1、直系の孫に2分の1

配偶者の親が存命でも孫が高順位の法廷相続人なので親には相続されない

 

例3

前妻の子どもと後妻の子ども

2度目の結婚した夫婦に子どもが1人授かったが、その後に夫婦とも交通事故で亡くなってしまう。その後、夫には以前離婚した妻の間に1人の子どもがいることがわかった。

(結論)

前妻の子どもと後妻の子どもに各2分の1

後妻の間に子どもがいなければ前妻の子どもに全部贈与される

 

例4

配偶者と長女1人とその子ども(孫)と故次女の子ども(孫)2人

永年連れ添った夫が亡くなり、離婚した長女が子どもと一緒に家に住んでいる。

次女は結婚したが早く亡くなり、その夫と2人の孫が別の家に住んでいる。

(結論)

配偶者に2分の1、長女に4分の1、次女の2人の孫に各8分の1

次女の子どもである孫が繰り上げの相続人となる、これを代襲相続という

長女は健在なので、その子どもには相続権が発生しない

 

例5

配偶者と姉と故弟の子供(甥)

夫が仕事中に急に倒れ、そのまま帰らぬ人になってしまった。夫の両親はすでに他界しており、親族は姉と若くして亡くなった夫の弟の息子が1人いる。

(結論)

配偶者に4分の3、姉が8分の1、甥が8分の1

甥姪の場合は夫と血の繋がりがあることが要件となる

 

 多くありそうな事例を幾つか取り上げましたが、この他にも親族関係を考えると無限といっていい程のパターンがあります。

 

 そして、法廷相続には順位というものがあり、絶対順位が配偶者、第1順位が被相続人の子、第2順位が被相続人の親、第3順位が被相続人の兄弟姉妹となっているそうです。

 また遺言がある場合は、相続分とは異なる相続割合にできるので、自分がボランティアをやっている団体や特に世話になった人、あるいは仮面夫婦である妻よりも好きな愛人などにも相続させることができるようです。

 ただし、遺留分という制度があるので第3順位である兄弟姉妹以外の直系尊属の相続人には遺留分が認められるので、本来の相続分の2分の1から3分の1は相続することができます。

 例えば、遺言で愛人に遺産をすべて相続させるようにしても、妻に4分の1、子供に8分の1は遺留分減殺請求をその愛人に対して行うことにより、取りもどすことができるそうです。でも、普段から夫婦円満で仲良く生活していれば、そういうことも起きないはずなので、奥さんにも相続のことは話しておいたほうが良いのではないでしょうか。

 以上の事例は、私なりの判断なので詳細は専門家と相談してください。

 

 私の知人にも、母親が亡くなった後の1か月後に自分も病死してしまい、残されたのが妻子と知人の姉だけとなり相続がかなり複雑になってしまった例もありました。

 また、別の知人の場合は奥さんの両親が早くに亡くなり、その後しばらくして亡くなった祖母名義の家と土地をめぐり亡父の兄弟との遺産の相続で揉めており、その知人も頭を抱えていました。

 

 私たち人間は死亡率100パーセントですから、自分が元気な時にトラブルにならないような遺言状を作っておいた方が良いのではないでしょうか。