第109回 ほんとは怖いITの世界 〜GAFAが支配する?〜
ネット通販を時々利用しているが、商品や本などを検索や購入した数日後にパソコンを開くと、画面の横の方に自分が検索あるいは買ったものに関連した商品が表示される。
タイミングよく自分が関心のあるような広告が出るのだなあと、当初は思っていたのだが実際には「Cookieクッキー」という技術が関係しているそうだ。
このCookieはWeb内で情報を一時的に記録する機能で、開いているHPの内容と関連のない内容の「追跡型広告」というものに重要な役割をしている。
よく考えてみるとこれは大変に恐ろしいことで、インターネットを利用すると個人保護法どころか、自分の私生活までなんでも筒抜けになってしまうことにもなりそうである。
パソコンやスマホで商品や文字を検索すると、例えば本や映画の情報からは本人がどういう分野に興味があるのかがわかってしまう。それは文学、ノンフィクション、ビジネス、歴史や地理、政治経済、宗教や思想、エンターテインメント等々あらゆるものである。洋服や趣味、生活用品などからは、本人の生活程度や性格や体のサイズや健康状態など。そして銀行や証券会社、投資関係の取引からは、資産状況が丸裸になってしまうかもしれない。
これらの情報が全部手に入れば、「ターミネーター」の映画のようなコンピューターが社会のすべてを管理する世界になってしまうというのも夢物語ではなくなってしまう。
グーグルは1日60億回のアクセスがあるという。かつて、グーグルの関係者は「世界中の人々が、どこにいるのか、何を考えているのかはすべてわかる」と豪語して、ひんしゅくをかってしまいその後には前言を撤回したことがあった。
Gmailは建前でグーグル社ではみていないことになっているが、サーバーには蓄えてあるらしいので、その点では不気味ではある。
最近、GAFAガーフアという言葉を時々見聞きすることがある。それらの頭文字がつくIT関連企業のことであり、いかに強大に成長して世界を席巻しているのかということが、その話題の中心である。
GAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンであるが、それにマイクロソフトを入れたGAFA+Mの5社の売上の合計が3.8兆ドル (412兆円)である。さらに中国のIT関係企業テンセントとアリババが1兆ドルの売上なので、7社の総額が日本円で約530兆円となる。
この数字は日本のGDPの546兆円とほぼ同じとなり、1970年代まで石油の生産をほぼ独占状態で支配していた7社の セブンシスターズになぞらえ、そのITの7社をニューセブンシスターズともよばれているそうだ。
ちなみに日本の売上の上位企業5社であるトヨタやNTTなどの合計が62.9兆円なので、いかにニューセブンシスターズの売上が巨額なのかが想像できる。
これらのあまりにも巨大過ぎる企業をけん制するための目的もあると思うが、今年の5月から欧州連合EUがGDPR一般データ保護規則という制度を施行した。
この制度は、個人情報保護に関する法整備の目玉のようで、インターネットによる個人情報の規制を違反した場合は、巨額な罰則の代償を科している。
例えば、私が飼い犬のためにドッグフードを探したとする。そのキーワードのいくつかに「ドッグフード、シニア、肥満用、大型犬、ブリーダー用」と入れて検索。時間をかけて探すが、なかなか納得するものが見つからずにその日はPCを閉じてしまう。数日後にPCを開くと画面の横にドッグフードの広告が載っている。これが「追跡型広告」であるが、EUの制度ではこの広告を載せた会社が違反を犯したことになるという。
GDPRでは、個人の情報を利用する場合は、必ず相手の了解をとってからでなければ広告をそのデータの持ち主に送ってはいけないらしい。
このように個人情報の使用の承諾をとるということは、現在必ずといってお目にかかるターゲティング広告は全部該当することになる。
ちなみに、制裁金の額は以下のとおりである。
・データの取り扱いに関し、適切な技術的、組織的安全管理対策を 実施しなかった場合
1千万ユーロ、または、全世界の売上高の2%のうち、いずれか大きい方の過料
・個人データの処理に関する原則を遵守しなかった場合等
2千万ユーロ、または、全世界の売上高の4%のうち、いずれか大きい方の過料
「子供の3分の1以上がスマホ中毒」と最近に報道され、鳥取大学医学部 尾崎米厚 教授
は「中高生のインターネットの過剰使用の病的使用の推計数は93万人。不適応使用の推計数が161万人」と警告している。
その数は5年間で倍増しているというので、あと数年後にはほとんど全員がITの中毒患者になってしまう恐れがあるのではないだろうか。
日本ではEUのような個人情報の規制と共に、人間の心への影響に対する規制も是非実施してほしいと願うものである。