第106回 トップの必須条件 〜オイ、悪魔!!〜
日本B連盟やN大学の長らく君臨していたトップの責任問題が、マスコミ界を賑わせています。また、世界政治のトップもロシアや中国、そして日本も今までに原則制限されていた任期の大延長が実施されることになりました。
長期に権力の頂点にいると、やってきたことの良し悪しや真偽は別として、やはり問題を抱えてしまう場合が少なくないようです。
人の変節を食べ物に例えますと、「熟成」は保存していると酵素によってタンパク質が分解されアミノ酸が生成されて、より深みのある味になります。
また、「醗酵」は良い微生物の働きにより、やはりアミノ酸が作られ独特なうま味を作り出します。
「腐敗」は、悪い微生物の働きで食材に含まれる有機物などから有毒な物質が生成され、その食物が食べられなくなることです。
このように保存の方法によって、より深みを増す味にもなるし、反対に有害になってしまうことがあります。
会社のトップや部門の責任者も同じように「作りたて」「採れたて」から「熟成」や「醗酵」となって、いい味を出していくことが経営や管理の流れではないでしょうか。しかし、いつしか時が経過するにつれ「腐敗」していくことは絶対に避けねばなりません。
その為の自分への戒めとして、「おいあくま」という言葉があります。
知っている方は多いと思いますが、旧住友銀行の頭取を長年務められた堀田庄三氏が部下への訓示として話していたそうです。
改めて説明しますと、それは「おごるな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな」の頭文字を組み合わせたものです。
「おごるな」は、地位・権力・財産・才能などを誇って、思い上がった振る舞いをしないようにということです。
そして「威張るな」は、威勢を張って偉そうにして、自分を実力以上にみせたりしないようにすることです。
「己を知り己を知れば百戦危うからず」という格言が意味するように、自分を知るということは大変に難しいです。それでも、自分を第三者の立場でしっかりと見て、自分が他人であった場合に長く付き合いたいのか、少しでも尊敬することができるのか、自分を見つめなおすことが必要です。
そして、会社の上層部にいる人間は特に「自分に甘すぎないか」ということも確認する必要があるのではないでしょうか。自分に厳しく他者にも厳しい、自分に厳しく他者には甘い、自分に甘く他者にも甘い、よりもはるかによくないのは「自分に甘く他者には厳しい」ことです。
上司が「自分甘他者厳」であると部下が気づいたり思ったりしたら、その会社はどうなるでしょうか。きっと上司の命令や指示に対して、面従腹背になってしまうのではないでしょうか。
部下に売上げや利益だけを目標にして、それをさらに成果を出すことを恫喝や強要しながら、自分は平気で高級車に乗る、なんでも交際費にする、家族や自分の趣味も費用にして公私混同するなどは言語道断です。
あるいは規則や規律を厳守するように言いながら、自分は就業時間を守らず重役出勤や、社長の居所がわからず社員がいつも困っている、煙草やコーヒーなどを好きな時間に飲んでいるなどは論外です。
そして、社員にばかり残業や休日に働くことを無理強いしながら、ほとんど顔を出すことやフォローをしない上司も困りものです。
トップの言動と現場の思いが極端に違ってしまうと、会社組織は少しずつ崩れていき、それを防ぐためにトップは更に圧力をかけてしまうと、一昔前の運動部やブラック企業となってしまいます。
そこまで極端な企業になることはあまりないはずですが、そうならない為にトップに簡単にできることを提案します。
それは「5行日記」をつけることです。それは1日に1回だけ10分間、今日や昨日を振り返りながら、自分の言動について書き留めることです。短い時間でもいいので心を落ち着けて、いつ誰とどのような会話をしたのかを思い出しながら、ペンを動かしていくとそれだけで心のPDCAが回るようになっていきます。
継承がうまくいく順番は身内では1番目が娘婿、2番目は娘、そして3番目が息子ということを聞いたことがあります。反対に見ると「悪魔」になりやすいのが実の息子なので特に「おいあくま」は常に言いきかせたほうが良いかもしれません。
最後に「社長とは職業などではなく、生き方である」と私の知り合いの経営コンサルタントの方が話していましたが、まさしくその通りだと思いました。