第99回 エイリアン級の最強生物クマムシ 〜どんな環境でも生き抜く!!〜

第99回 エイリアン級の最強生物クマムシ 〜どんな環境でも生き抜く!!〜

 私が以前に知り合った方が社長をやっている会社が最近の3ヶ月で3社倒産しました。

 各会社の社長は本当に一生懸命に経営されていたと思いますので、その無念の胸中は察するに余りあります。

 

 そこで今回は少し不謹慎かもしれませんが、弱肉強食の虫の世界において想像を絶する環境でも生き残ることができる「クマムシ」を紹介します。

 

 今年の春に新聞の片隅に「クマムシ、鶴岡市で新種発見」との記事があった。その中に「最強生物とも呼ばれるクマムシ」というコピーに興味を持ちいろいろと調べてみたら、このクマムシは不死身のエイリアン級のとんでもない生き物であった。

 

 クマムシは世界中の海や山や熱帯から寒帯までどんな環境や場所にでも生息しており、鶴岡で発見された新種もその学者が自分のアパートの駐車場で採取したコケの中から見つけたとのことである。

 

 漫才の世界にもクマムシという芸人がいるらしいが、この本当のクマムシは知る人ぞ知るその世界においては大人気のムシである。

 

 なぜ人気かというと、クマムシはある状態になると空気や水や餌がなくとも、そして高温や超低温でも生き抜くというがその秘密のようだ。

 

 さらに、その人気に拍車をかけるのが、どんな生物でも耐えられないような圧力や真空の環境、そして高線量のX線、ガンマ線、重イオンビームを照射されても跳ね返すエイリアンやゴジラのように不撓不屈の最強の虫だからなのである。

 

 クマムシといっても姿は動物のようで、それものそのそとゆっくりとクマのように歩くことで、英語名でWater berという名がついたようだ。

 クマムシは知られているだけで1000以上の種類がいて、ちなみに体長は50μmから1.7㎜程度であり、日本によくいるオニクマムシが歩くスピードは1秒間に0.1ミリと超遅い。

 そのためか緩歩動物門に分類されており、4対8本 の肢であんこ体系の力士のようにゆっくりと歩き、無意識に愛嬌を振りまいているようにもみえる。

 

 見かけはのんびりしているようなクマムシであるが、いったん環境が悪化した時にそれをしのぐ力が半端でないのである。

 

 クマムシは干からびた状態、つまり体内の水分が約3%位に乾燥してしまうと死んでしまったように見えるが、実は「乾眠」といって樽のような形になった時が「最強生物」を遺憾無く発揮するのだ。

 

 その強力無比の我慢強さは次にあげる実験に耐えたことからもよくわかる。

 

その1. 液体空気マイナス200℃と液体ヘリウムマイナス272℃

その2. プラス151℃の高温

その3. 6000気圧の高圧(水深1万メートルの75倍に相当する圧力)

その4. 57万レントゲンのX線照射(人間の致死量は500レントゲン)

その5. 6時間照射の紫外線

その6. アルコールや、殺虫剤に使う臭化メチルにも耐える

その7. 空気のない真空環境

 

 この乾眠状態のクマムシに水を1滴たらすと、数分後には蘇生してピクリピクリと動き出すからその生命力には脱帽する。また、乾眠の真空状態であれば半永久に生き延びるという説を唱える研究者もいる。

 

 ヨーロッパの宇宙機関ESAが「クマムシを宇宙に飛ばした」という情報もあり、さらに日本にはクマムシの研究者が多いようなので、研究が進めば人間の長寿や健康にも役に立ちそうである。

 

 例えば、不治の病の患者は医学が進歩するまで乾眠させておくとか、数十年数百年かかる宇宙移民団を乾眠状態で輸送するとか、絶滅危惧種の生物をクローン技術で増やせるまで乾眠させる等々。

 

 そして日本の企業特に中小企業にこそクマムシに倣い、予想される東京オリンピックの後の不況や想定を超えた環境などに、自社なりの「乾眠」でそれをやり過ごし、しぶとく「クマムシ企業」として生き抜いていただきたいと思うのである。