第96回 アプリプログラミングへの無謀な挑戦

第96回 アプリプログラミングへの無謀な挑戦

 「シニアから始めるプログラミング」というテーマの講演会に行ってきた。会場は50人の予定であったが、シニア以外の若い人も混じって定員の倍の100名以上で立ちながら参加している人もいるほど熱気が満ちていた。

 

 この講演に刺激され私もアプリケーションソフト(アプリ)を作ろうと、期待に胸を膨らましていたのだが、そのアプリ山はとんでもなく高く険しく私の前に立ちはだかったのである。

 

 講演はスマホ用のアプリを作った方たちの話しがメインの催しだったが、なんとお二人とも世間でいえばおばあちゃんとおじいちゃんでした。

 

 最初に新聞やネットでも話題になった若宮正子さんという方が登壇した。若宮さんは「hinadan」というおひな様を並べるアプリを81歳の時に作り、そのアプリは8万人がダウンロードし120万人にカウントされ、さらに世界40カ国以上に紹介された。

 それが世界でも認められ国連で演説し大喝采を浴びただけでなく、2017年6月には米国アップルによる世界開発者会議に特別招待され、CEOのトムクックには熱烈に抱擁までされたそうだ。

 

 その講演はとても御年82歳の方とは想像もできないほどかくしゃくとしており、「創造することこそ人工知能にできない最も人間的な活動」とか「プログラミングは料理のようなもの」など我々シニアを励ますようなお話しをされた。

 

 続いて登壇したのが鈴木冨司さんという方で、やはり1935年生まれの82歳の方であった。鈴木さんは三菱商事OBで現役時は世界を股にかけて仕事をしていたそうで、英語も堪能であり今でも現役でやれそうな感じであった。

 スマホ用のアプリは既に7つ開発していて、作るごとに進化しているとのことで「何時間も立ちながら夢中になれるのはアプリ制作です。」と楽しそうに話していたのが印象的であった。

 

 講演会が終わった後は会場の熱気が私にも乗り移り、「よおし、アプリを自分でも作ってみよう」と意気込んで帰宅した。

 

 その後、日をおいて夜の「アプリシニア講座」に行ってみると、定員オーバーの20数人が参加していたのに又驚いてしまった。ただ今回はシニアのほかにも経験のある方も参加しており、夜の7時から9時半までの「さわり」ということで、自己紹介のあとわからないことを隣近所の人と相談しながら進めるという内容であった。

 

 その時に「アプリはアップルの場合、SwiftはXcodeを使って開発をします。そのため、Xcodeが動作するMacパソコンが必要です。」旨の話しを講師の方がされた。

 なにを言っているのかさっぱりわからず、参加者の面々が頭の上に???を乗せていたのに気づいた主催者の方が、「それではHour of Code アワーオブコードやScratch スクラッチは簡単ですからやってみましょう」とのお話しをいただく。

 

 持参したパソコンで初めにHour of Code 関連のHPを開いてみると、

「Hour of Code は、180カ国以上から数千万人の生徒が参加する世界的なムーブメントです。1時間のチュートリアルは45ヵ国の言語に翻訳されています。4歳から104歳まで、経験は必要ありません。」とあるが、増々わからなくなり謎が謎を呼ぶ。

 

 ムーブメントがわからない、チュートリアルもわからない、自分は4歳未満か105歳以上の知能しかないのかと、背中に嫌な汗がにじんでくる。

 なんとか簡単そうなHPを見つけ、「スター・ウォーズ:コードで銀河を造る~小学2年生以上」という画面を選び「始める」をクリックする。画面がいろいろと出てきて、説明を始める。目を凝らしてもよくわからない。何度かクリックしているうちに訳が分からなくなってしまった。体温が2℃ばかり上がったような気がする。

 

 そのうち講師が「Scratchもやってみてください」と簡単そうにふわりと言う。Hour of Codeは一旦ほっといて、今度はScratch関連のホームページを開き見てみるが、椅子に乗ってくるくると何度も回された後に、目の焦点が合わずクラクラするのと同じ現象になってしまい眩暈がしてきた。

 追い打ちのように「Swift Playgroundsもやってみると楽しいですよ」とまたも講師がさらりと話す声が聞こえる。催眠術にかかったようにそのHPを見るが、私はボディーブローのあとにアッパーカットを食らったようになり、完全にKO状態で思考力が停止してしまった。

 

 気がつくと夜の9時半を過ぎており、頭の中はSwiftやXcodeやHour of Code やScratchやらが、パチパチと火花を散らしたようになっており、それらを放電しながら家路についたのでありました。