第87回 数字の読み方 〜データはどこまで信用できるか〜
平昌冬季オリンピックが終わり、日本は過去最高のメダル数で沸き返ったが、その数字をあらためて見てみると別の発見がある。確かにメダル獲得数はそうだったが、メダル獲得率になると長野大会の4.9%に比べて今回は4.2%となる。
別にその成果に水を差す気はないが、競技種目が長野大会の68種目から1.5倍の102種目になったために増加したことを考えると、手放しで「強化策が実った」と喜んでばかりはいられない気がする。
ただ参加選手の数からいうとメダル獲得率は1割以上になるので、今回の選手団は精鋭部隊ともいえるかもしれない。
このように見方により、その成果の評価が分かれてしまうので、企業内で数字により実績を評価し対策を立てる場合は、十分に気を付けなければならない。
利益率は参考になるか?
部門別、あるいは工場別を評価する場合に、年度末にその部門ごとに報告書が上がってきたとして、A部門から「我が部門の利益は会社全体の50%を占めているので、最新鋭の設備をするために来期は○千万円の投資をしてほしい」との要望があり、それを検討することになる。
少し遅れてB部門から「うちは会社の利益総額の60%をたたき出したので、△千万円の投資が必要」
さらにC部門からは「当部門は40%だから、なんとか□千万円を要請する」など利益を訴える各部門の報告を合計すると、200%を超えてしまう事態になる。
もちろん、これは察しのとおり他に赤字部門があるので、このような数字になったのである。つまり会社全体では部門別の全社の利益率は下記の表のようになる。
結局、その数字がプラスやマイナスに振れる場合は、全体の比率を計算することはほとんど無意味なのである。
確率は正しいか?
私はギャンブルが苦手で海外に行った時も、ほとんどやらないがギャンブルというと確率を予想して当てるものがほとんどなので、その確率が落とし穴になる場合がある。
例えばジョーカーを抜いた52枚のトランプを用意して、X氏という人物があなたと賭けをしたとする。
X氏「このトランプ中の好きな数を一つ言ってください。そして7回引いて、その数を当てたら1万円差し上げます。ただし、当たらなかったら1万円いただきます」
あなたは「52枚のカードのうち同じ数字が4枚ある。つまり52枚のうち当たりが7.7%なので、カードを7回引くと当たりの数字を引く確率が約54%になるので、この賭けは自分に有利になる」と考えるはずである。
つまりあなたが勝つ確率の54%よりもX氏が勝つ確率が46%と8%も差がついてしまうので、あなたはその賭けに乗るかもしれない。
ところが、実際はX氏の勝つ確率が57%になるので、X氏の方が虎の子の1万円を獲得するチャンスが多いのである。
それは、52枚のカードから4枚を引く確率は、4を52で割るので7.7%、つまり外れる確率は92.3%になる。
7回カードを引くから92.3%の7乗で57%のはずれの確立になるので、あなたの勝つ確率は43%になってしまう。ただし、カードを1回引いた毎にそのカードに戻すことが条件となる。
ギャンブルに限らずこのように確率だから当然と思っていても、そこに落とし穴がある場合もあるのでよく考えて行動したい。
72の法則
昔は金利が高かったので、その時に役に立ったのが「72の法則」である。年配の方はご存知であるが、これは定期預金や債券などが、複利計算の元利合計で2倍になるには何年かかるのかというのを簡単に計算する方法である。
72を金利で割ると年数が「あっ」という間にわかるので、例えば1980年代は預金金利が最高で8%の時代があり、2倍になるのに9年しかかからなかった。
72÷8(%)=9年
なんと10年未満で倍になっていたのである。それに比べて現在は定期預金の金利が0.01%の時代なので、2倍にしようとすると
72÷0.01(%)=7200年
となり西暦1万年近くまで待たないといけないのである。
昭和の時代の人はこういう背景もありわかってはいても、つい詐欺まがいの高金利商品に手を出してしまうのかもしれない。