第86回 震災に役立ったモノ、役立つモノ

第86回 震災に役立ったモノ、役立つモノ

 前回のブログでは東日本大震災後についてことを取り上げましたが、今回は3.11の当日や電気、ガス、灯油や水が使えなくなった時に役に立ったものと、用意しておくと役に立つものを紹介します。

 

新聞紙の活用(薪新聞)

 新聞紙の活用は、窓ふきや床の掃除、靴やカバンの湿気とり、生ごみや油の処理に使ったりすることがあります。そして、災害時に着るものが少なく寒い時には重ね着した服の間に挟むと保温効果が増して温かいというのはよく知られています。

 

 私が東日本大震災で電気もガスも止まってしまった時に、薪のかわりに燃料にしたのが新聞紙でした。

 新聞紙を3回折りたたんでから、薪のようにグルグルと力を込めて固く巻いたものを作ります。大きさは竹輪くらいですが、それよりも大きくても構いません。

 次に一斗缶の下の方に、15㎝角位の火皿兼送風口になる穴を空けます。そして新聞紙をモジャモジャに丸めて火をつけたらその上に薪のようにした新聞をいれます。

 薪状の新聞が燃えてきて火の勢いが強くなったら、一斗缶の上に水を入れたやかんや鍋やフライパンを乗せますが、燃えカスが入らないように必ずフタをするようにしてください。

 もちろん薪新聞は火力を見ながら足していきますが、震災時にこのようにして温かいお茶を飲むことができましたし、水餃子やみそ汁なども作ってしのげました。

 

 本格的に薪新聞を作りたいというのであれば、ペーパーログ(紙製薪)製作機というものがあります。

 新聞紙をちぎってグチャグチャにしてから水に浸し、その製作機に新聞を詰めて押し型に入れて水を搾り出します。充分に水を切ったら箱から取り出して乾燥させ、1週間位乾燥させると「ペーパーログ」ができます。形は四角いレンガのようになり、固形燃料として薪ストーブとしても使えるし、軽いので野外に出かけた時の炊事用の燃料としても重宝しそうです。興味がある方はあまり高くない価格で何種類か売られているので、インターネットで探してみてください。

 

カセットガス(携帯用ガスボンベストーブ)

 私は東日本大震災の前に起きた1978年の宮城県沖地震にも遭遇しましたが、インフラはどちらも水道、電気、ガスの順番で復旧しました。東日本大震災ではガスが家で使えるようになるまでは3週間近くかかってしまいましたので、ガスをメインに使っている家庭であれば、ガスが使えなくなったら電子レンジのほかに電磁調理器やカセットコンロも用意しておくと万全です。

 震災時には我が家にはガスボンベの在庫は1本しかなく、買おうにも町のスーパーなどではすぐに在庫が底を尽き、しかたなく前述の新聞紙を使いました。電気もガスも使えず灯油も無くなった場合の備えとして、調理器具の他に携帯用ガスボンベストーブというのもあります。非常時の暖をとるのに役に立ちますので、一家に1台は用意したいものです。価格も数千円で買えるので、台所で足元が少し寒い時なども役に立ちます。

 

ゲルマニウムラジオ

 年配の方であればほとんどの方はゲルマニウムラジオを知っていると思います。昔は小中学校の科学の本で紹介されていて鉱石ラジオともいい、電気や電池がなくともラジオが聞こえる優れものです。

 絹巻き線をボビンに巻いてコイルを作り、コンデンサーなどと組み立てイヤホンでしか聞けないラジオでしたが、最初に音楽が聞こえた時には魔法でも経験したような思いでした。電波が弱い時はカーテンレールの針金にそのラジオから伸ばした線に、アルミの洗濯バサミを挟んで感度をよくして聞くことができました。

 完成品も安く売っていますので、万が一に備えるもよし、時々聞いてみて昔を懐かしむのも良いのではないでしょうか。

 ちなみにゲルマニウムラジオは塹壕ラジオともいわれたそうで、戦時中に塹壕に缶詰となったアメリカ兵が暇つぶしに作ったという逸話があるラジオです。

 

 その他にもペットボトルのハエとり器やサランラップの活用など、震災時には身近なものでの工夫がたくさんありました。「やはり人間の能力は土壇場になるとフル回転するのだ」とつくづく実感したのです。

 

 また、このブログを書いていたら、東日本大震災について以前に某前復興相が「まだ東北で良かった」と発言しましたが、それを聞いた方たちが「東北に生まれて良かった」や「東北を訪れて良かった」のつぶやきがツイッターにあふれたと聞いた時に、「日本人もまだまだ捨てたものではないなあ」などと、考えたことも思い出してしまいました。