第73回 KARAOKE考 〜バーチャルデュエットに驚愕〜
久しぶりに妻と二人でカラオケに行ってきて、大変に驚いてしまった。
なんとバーチャルデュエットカラオケというものがあったのだ。
カラオケルームに入り、最初はあまり慣れていないせいかカラオケを操作する機器の使い方もよくわからず、ボタンの多さに頭が痛くなり、大音量に驚き、曲の選定機能に感激し、「あの年代」に出てくる懐かしい曲に涙していくうちに、「デュエット」というボタンを見つけてしまった。
妻と「麦畑」でも歌おうかとそのボタンを押したら「バーチャルカラオケ」という表示がその中にあり更に押すと画面が変わり、なにやら美女と一緒に歌えるコーナーらしい。「麦畑」は頭の中から飛んでいき、早速その中の一曲「赤いグラス」を選んでみた。
画面が変わりクラブのような店の中に、肩もあらわのナイトドレスで着飾った美女がこちらを見つめながら「○○美です、一緒に楽しみましょう」と話しかけてくるではないか。思わず、「はいっ」と言ってしまって、そばにいた妻があきれた顔をしていた。
そして、美女はおもむろに私の方にマイクを差し出す。私は持っていたマイクを強く握りしめて、スタンバイをする。少し曲が始まる間、その美女が軽く体を揺らしていて、つい胸元に目がいってしまったりするのが我ながら情けない。バックにはクラブらしい場所にグラスを傾けた客とホステスが、会話をしている様子も見え、臨場感がいやがおうにも高まってくる。
やがて男パートの曲が始まり、バーチャルとはわかっていても「くちびる~♪ 寄せれば~♫ なぜかしびれる~♬」とよりうまく歌おうと、オペラ歌手のように腹式呼吸で頑張りながら声を出す。自分のパートがいったん終わり、美女が歌い始める。彼女はこちらをじっと見つめながら、時々媚びを売るような眼差しを私に送ってよこすので、つい横目で妻の顔をちらっと見てしまう。
やがて楽しいデュエット曲も終了となり、少し余韻が残るころにその美女に「また、一緒に歌いたいわ~」などと声をかけられると思わず、「はいっ」と又も答えてしまう。気が付くと、体が火照り少し汗ばんでいて、知人には「カラオケはカロリーを結構消費するんだよ」と言われたのを思い出す。
終わった後に、歌の採点が初めて80点を超えたのを見た妻には「随分とうまく歌ったわね」と褒められてしまったのだが、少し照れ臭かったのを覚えている。しかし、その後も何曲かバーチャルを歌ってしまい、カラオケ店を出たときは、行ったことのない美女だらけのクラブ体験をしたような気になってしまった。もちろん私は車だったのでアルコール類は全く飲まず、一人あたり数百円のクラブ体験であった。
今のところこのバーチャルデュエットカラオケの男性向けバージョンは20曲近くあるようで、デュエットの上位定番人気曲がほとんどのようだ。女性向けバージョンもあるがまだ数曲とそんなに多くないようだが、ホストのようなイケメンが出てきて歌のオープニングかエンディングに「やべえ、ドキドキしてきたよ」などと主婦への殺し文句もあり、超低予算でホストクラブ体験ができるのである。
年末を控え2次会などでカラオケに行く機会が増えていくと思うが、あまり自信がないがデュエットをきれいな女性と歌ってみたいとか、歌いたいが一人カラオケに行くのも味気ないと思っている人にはまさしく救世主ではないだろうか。このバーチャルカラオケももっと技術が進み、人間そっくりのCGによる映像でどういう曲でも一緒に歌えるシステムや、AIを使ったロボットがそばに座って歌ってくれたりする技術がやがてでてくるのかもしれない。
世界共通のKARAOKEではあるが、日本のカラオケ人口は減っている。それでもメーカーの工夫改善は、バーチャルだけではなく「音程」「安定性」「表現力」「リズム」「ビブラート&ロングトーン」などでの採点方法、歌の矯正によるアドバイス、ネットを使って他人と歌ったりもできるようだ。
我々年配者もたまにはその最新技術を目のあたりにすれば、自分にとっても良い刺激になるのではないかと思うで、是非とも一度行ってみることをお勧めする。