第57回 ペルー夢遊旅 〜クスコで謎の葉を噛む〜

第57回 ペルー夢遊旅 〜クスコで謎の葉を噛む〜

 ペルーの首都リマのホルヘ・チャベス国際空港に着いたのは、日本の成田空港発のフライトを乗り換えて27時間、我が家を出てからは34時間経過していた。  

 ちなみに、リマは同国3100万の人口の内3分の1を超える800万人の同共和国最大の南米有数の都市である。

 現地時間は昼の12時半だが日本との時差はマイナス14時間なので、前日の22時になる。

 

 初めての南米の地に着いた時は、さすがに時差の影響と寝不足で、まだ夢の中を漂っている感がありフラフラする。

 病人や徘徊と間違えられると困るので、空港ではとりあえずシャキッとしたふりを装うが体調は病み上がりのようである。

 

 ブログの10回目でもペルーをとりあげ、マチュピチュ温泉を紹介したが今回は名所遺跡ではないクスコでの「初体験」を告白する。

 

 リマからマチュピチュ遺跡へ行く通過点の都市がクスコである。

 

 クスコは3400メートルの高地にあるインカ帝国の首都であったが、今は人口が40万人のペルーの一大観光都市となっている。

 

 空港について驚いたのが、港内通路の台の上に無造作にとんでもない葉っぱが置いてあったのだ。

そこにいた現地のペルー人に「これは、なんなのだ?」と聞いたら「コカ・・・」というので「あのコカの葉なのか?」とさらに確認、すると「アノ・・コカノハ・・ネ」らしい返事で一瞬絶句。

 その葉っぱは、日本では厳罰必然、発見即豚箱、新聞実名、人生落伍、一家離散、芸能人謝謝、必然のコカインの原料のコカの葉なのであった。

 

 初めてモノはなんでも試してみるのがモットーの私は早速その葉を口に入れ噛んでみた。

「んんん・・?」何の味もしないし、香りもしない、ただのその辺に落ちている葉(私は落ちている葉は味見をしたことがないが・・)をしゃぶっただけの食感しかしない。

 

 さらにもう一度、別のコカの葉を口に入れてヤギのようにもぐもぐしてみるが、やはり無味無臭、極楽浄土に召されたようなハイな気分もしないし、乗り物酔いになったように目の前がぐるぐると回る感覚にも襲われない。

 これは無料で噛み放題持ち帰り放題のようで、その「係員」が「モッテイケ・・」と手をひらひらさせる。

 

結局、少し遅れてきた日本人ガイドに言われたのが下記のとおりである。

 

一.日本に持ち帰ったら、警察から即逮捕

一.帰国はフライトがアメリカ経由なので、見つかったら刑務所確実

一.コカの葉、コカ茶、コカキャンデー、コカクッキーなどすべて対象

一.ペルー国内は全部合法

 

 コカはアンデスの先住民たちが、乾燥させた葉を石灰と一緒に噛むそうで、高地の環境負担を軽減する効能があるらしく、葉だけであればコカインも習慣性になるような量は含まれていないそうだ。葉を噛むと高山病にも効き目があるので、旅行者で試す人もいるという。

 

 そういうことで、アンデスの人達は朝から晩まで何度もカミカミをし、煙草よりも害のない嗜好品として地元に根付いているのである。

 

 コカインはコカの葉を精製抽出したもので、中枢神経を刺激して精神を興奮させる作用が強いので、それは世界各国で厳重に規制されているのである。

 ただ、コカの葉自体はその成分がわずかしか含まれておらず、健康には何の影響もないというが、もちろんペルー国外では御法度なのでユメユメ日本に土産で持ち込んではいけない。

 

 昔はアメリカのコカ・コーラにはコカの成分が入っていたそうで、その後の規制でコカの成分は入っていないらしい。

 あとで調べたら、コカ・コーラはコカ成分にコーラの実の成分、そして炭酸プラスエトセトラを混ぜて作っていたとのこと。

 

 現地のホテルやレストラン、土産物屋ではどこでもコカ茶が飲め、コカキャンデー・クッキーが売っていて安いこともあり、観光客はつい買ってしまうことがある。

 

 その為に、我々ツアー客は出国近くに添乗員やガイドから何度も「スーツケースや服などにコカ関連土産は入っていないでしょうね!!」と念を押され、その度にズボンのポケットを裏返し「ナーイッ!」「アッリマセーン!」と私と妻は肩をすくめたのである。