第53回 震災から学んだ労務管理 〜就業後社内でスマホゲーム、構内で怪我は労災?〜
前回は、災害時の残業や休業した場合の保証という内容でしたが、今回は労働災害である「通勤災害」と「業務災害」についてお話しします。
震災時には労働災害についても労務の現場で問題が多発したが、会社からどういう命令が出たのかにより、それが業務災害か通勤災害かに分かれてしまう。
外回りの従業員が死亡した例や、沿岸部の会社に居残って津波で死亡した例、自宅に帰宅してから死亡した例もあり、その場合の使用者責任はどうなるのかを知り合いの社労士から教えられたのが下記の事例である。
① 帰宅命令 ⇒ 死亡・行方不明(怪我) ⇒ 通勤災害?
② 避難命令 ⇒ 死亡・行方不明(怪我) ⇒ 業務災害?
③ 社内待機命令 ⇒ 死亡・行方不明(怪我) ⇒ 業務災害?
労働災害(労災)は業務災害と通勤災害に分かれているが、私は社労士ではないので詳しくはないので、以下の例は災害時ではないが参考として見ていただきたい。
例1)
従業員が仕事を終えタイムカードを打刻したあとに社内で転倒して怪我をした。
事業所内なので「業務災害」
社内で仲間と談話したり、スマホでゲームをしたりした後に事業所敷地内で転んでけがをした場合も、「業務災害」になるので、打刻後は速やかに帰宅させるのが望ましい。
例2)
出張先から自宅に帰るときに交通事故で怪我をした。
家に帰るまでが業務中なので 「業務災害」
直帰ではなく会社に帰ってから帰宅途中の場合は「通勤災害」になる
自動車や自転車の通勤者が会社の駐車場内で怪我をした場合でも「業務災害」になるので、指導徹底が必要。
例3)
学生アルバイトが学校帰りに会社に向かう途中に怪我をした。
「住居から就業場所へ向かう途中の災害」ではなく「学校から就業場所へ
向かう途中の災害」なので「通勤災害」でも「業務災害」でもないので
労災保険が適用されない。
労働災害である業務災害と通勤災害については、詳細は社会保険労務士などに聞いていだきたいが、労災保険料についてどんな些細な事故でも労災保険を使う、と翌年に保険料が上がってしまうと誤解されているので紹介したい。
それは「メリット制」といって、従業員が100人未満の場合はほとんどが労災保険を使っても、翌年の保険料が上がることはなく100人以上の場合が影響する。ただし20人から100人の場合でも、給付金が一定額以上支払われた場合には保険料の増減が行われるそうである。
いずれにしても、震災時の津波で宮城県沿岸部の某銀行支店の13人の行員中12人が3階建てのビルの屋上に避難したのに犠牲になった被災事例や、自動車教習所の送迎車4台に乗っていた高校卒業をまじかに控えた子供たちや職員の大半の26人が津波にのまれて犠牲になった事例は、災害時のリスクマネジメントを考える上での我々の深い教訓としなければならない。
企業も団体も災害時のリスクマネジメントは、命を守るということが一番大事な目的であると認識して、今後の「こと」に備えたいものである。