第50回 くまモンは孤独?~熊猪兎狸の話し~
熊本にはクマがいないということはご存じだろうか?
以前に仕事で熊本県に行く機会が多くあり、地元の方と話していたら「熊本にはクマはいませんよ。」といわれ驚いたことがあった。昔は九州にもクマは生息していたらしいが、現在は九州のツキノワグマは絶滅したとされ、残っているのはスーパースターの「くまモン」ただ1頭のみなのである。だから「くまモン」は九州では「孤軍奮闘」ではなく「熊軍奮闘」しており、仲間がいない孤独なクマなので今後も皆で大事にしてほしいと思うのである。
もともと熊本は「隈本」が由来であり、隈の字に畏れと言う意味があったので加藤清正が勇壮な熊という字にかえたそうだ。そのため、「くまモン」は熊本県民の期待を一身に受けて頑張っているのである。
九州では絶滅したクマだが、平成28年は全国でクマの目撃情報や被害が増大したと報告され、御多分にもれず宮城県も前年の3倍の目撃情報があり、仙台市内にも数多く出没しパニック寸前であった。
宮城県では平成27年度は目撃情報が504件であったのに、平成28年度は4月から翌年3月までに1642件と前年の3倍の情報が県によせられた。特に仙台市では560件の目撃情報があり、前年の県全体を上回る数字だった。
小学校の通路にある住宅街でクマが歩いていたとのニュースが時々あったが、市中にある大年寺山の養蜂場の巣箱がクマに荒らされたと聞いて耳を疑ったものだ。私の家は街中の仙台駅に近い地下鉄沿線にあるが、その蜂の巣箱があった場所までの距離は1kmくらいしかなかったのである。
先週末には宇都宮で660万円を奪った強盗犯が、栃木県の山林を逃走中にクマと遭遇し、県警の捜査員とクマに「挟み撃ち」になってしまい捕まってしまったとのニュースがあったが、クマもなかなかにやるものだなあと感心してしまった。
昨年度は山のエサ不足もありイノシシの全国区の出没も多かった。クマは冬眠するために多量のエサを食べなければならないが、平成29年1月から3月までの宮城県のクマの出没情報は7件しか寄せられていないので、ほとんどが冬眠状態だったのだろう。クマが食べるエサの中にはドングリもあり、イノシシも好物なのでクマと競って食べることになる。当然にドングリは不足するのだが、クマは木にも登れるので柿も食べることができる。又、クマは頭がいいのかイノシシの罠にかからずそのエサも食べてしまうらしく、そのためにイノシシはあまり捕獲されないのだがエサが不足しているために、冬でも活発に動き回り人間界にも侵入してくる。また、福島原発事故の影響で増えたイノシシがエサを求めて福島県から越境してくるので、宮城県南部では極端にイノシシが増えてしまったとの報もある。
昨年に仙台市の隣の町から通勤している社員が、交通事故で会社を休んだというので、後日その「事故」の様子を聞いたら、なんとイノシシに当て逃げされてしまったというのだ。彼がいつもの通勤経路の「山道」を通りかかったら突然横からイノシシがドカンと衝突してきて、わき目もふらずにスタコラと走り去り、自分の車は道から転落した状態になり大破したという。やはり猪突猛進というのはあるのだなと変に感心してしまった。それでも本人には怪我がなく保険会社からも応分の修理代が出たので、あとでとんでもない体験談として笑い飛ばせたことは幸いではあった。
野生の動物といえば、郊外の工業団地の会社にいた時は、構内に飛び込んできた野ウサギを捕まえたこともあったが、野生のウサギというのは初めて見たが、ペットショップで見かけるのとは違って小ぶりでスリムな「不思議な国のアリス」にでも出てくるように愛らしかった。何時間か経つうちに興奮したのかウサギの目が真っ赤になったので、ウサギ鍋にはせずに逃がしてやったものだ。
通勤途上はよくタヌキを見たのだが、それは車にぶつかり虫の息状態や、ビクとも動かずあの世行きではというのを何度か遭遇したものだ。以前は街中ではネコが車にさんざん轢かれて「ネコ煎餅」になっているのをよく見かけたものだが、体が猫より大きいのか「タヌキ煎餅」状態にはなってはいなかったが、やはりエサを求めて山から降りてきて事故にあったのだなと少し気の毒に思ってしまった。
昔よりも野生の動物を見かけることが多くなったのは、良いことなのかそうでもないのか、そして今の時代、日本に住む動物たちも、環境が変わっても生きていこうとしているのだから、我々人間も世の中の変化についていかねばならないと少しばかり考えたこの頃である。