第49回 あなたは自分を雇いますか?~近くて見えぬは まつげ~

第49回 あなたは自分を雇いますか?~近くて見えぬは まつげ~

 ドッペルゲンガー(自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種、「自己像幻視」ともいわれる)ではないのですが、世の中にもう一人の自分がいたとして、あなたは彼を自分の会社や職場に入れて一緒に働きたいでしょうか。

 

 自分と同じ性格も能力も知識も経験も同じ人間を採用したいと思う人は、おそらくあまり多くはいないのではないでしょうか。

 

「近くて見えぬはまつげ」ということわざは、離れた物はよく見える目であっても自分のまつげは見ることができない、人は他人のことについてはしっかり見ることができるが、自分自身のことについてはよくわからないものだという例えです。経営者や管理職の中にもそういうタイプが少なからずおり、「自分のことはさておいて」他人を見る目はたいへんに厳しいという人がいます。新入社員の面接や社内の昇給昇格時には、特に「ひと」と接しなければならない機会が多いので、ここで改めて自分を振り返ってみたいものです。

 

「万象はわが師」とか「人は自分の鏡」という言葉があります。鏡の中の自分が汚れた顔をしているのに、鏡を拭いてその汚れを落とそうとしている人がいるが、本当は自分の顔を拭けばいいのにそれをしようとしない。人を批判したり変えようとしたりする前に、自分が変わらなければならないことがわからない。そういう人は世の中のすべての事がらは、自分の鏡のようだということを理解して考え行動してほしいのです。

 

「性格のバイブル」というエゴグラム式性格診断の本があります。内容は自己診断をすることにより自分の性格がよくわかり、その対処法まで詳しく説明してあります。社内で良いコミュニケーションを造ろうと考えたら最適の本なので、管理者全員にやってもらったことがありました。この本では243通りの性格が詳細にわかるので、得意先、上司、同僚、部下だけではなく配偶者や親子供などの家族、そして恋人などの「気づき」や「つき合い方」なども解説してあります。

 

 ちなみにこの本は25年前に出た本なので、もう絶版になっているかもしれませんが似たような本は探せばあるかもしれないので、エゴグラム診断を自分や役員も含めて社内でやってみることをお勧めします。でも今ではインターネットでも無料でできますので、自分だけでもやってみるといいでしょう。

 

 エゴグラムはアメリカの心理学者エリック・バーン博士が創始した「交流分析」という 人間関係の心理学理論に基づいて作られた性格診断テストで、「自分の本当の性格がわかる」ことにより「長所は伸ばし短所は修正」して「人との付き合い方が変わる」ことにより、自分にとっての良いアドバイザーになるのではないかと思います。

 

 役員や管理職の条件としては、過去の実績はもちろんですが「勤勉さ」や「率先垂範」「誠実」「人望」が大事で、上司や部下への「報連相」そして心身の「健康」はやはり一番の基本でしょう。役員が職権を乱用したり、仕事を丸投げにしたり、指示ばかりでは部下がついて来ないのは自明の理です。

 

 ことわざにはおのれを戒めるものが多くあり、「己の欲せざる所は人に施す勿れ」は、自分が好まないことは他人も同じように思っているのだから、それを他人にしてはならないということですが、ほかにも「頭の上の蠅を追え」や「易者身の上知らず」「寝ていて人を起こすな」などもあり、私もそうですが自分でも思い当たる方もいるのではないでしょうか?

 

最後に稲盛和夫氏の名言をご紹介します。

 

「人は何のために生きるのか、

 善きことを思い、

 善きことを行えば人生は好転する」