第22回 ディズニーランドのちょっといい話

 東京ディズニーランドにはほのぼのとしたエピソードがかなりありますが、この話は若い方には有名な話しですが、年配の方にはあまり知られていないようなので取り上げてみました。

 

 東京ディズニーランドの中にあるレストラン。ある日、若い夫婦が二人でそのレストランに入りました。店員を呼び、なんと、「お子様ランチを2つ下さい。」とオーダーしたのです。

 

 アルバイトの店員は驚きました。そして、ディズニーランドの規則で「お子様ランチを提供できるのは9歳未満」と決まっているのを思い出しました。 「申し訳ございませんが…」とその旨を告げ、別のメニューを勧めました。

 

すると、その夫婦はとても悲しそうな顔をしたのでした。店員は事情を聞いてみることにしました。「実は…」と奥さんの方が話し始めました。

 

「今日は、亡くなった私の娘の誕生日なのです。身体が弱くて、娘は最初の誕生日を迎えられませんでした。家族三人でディズニーランドに行って、お子様ランチを食べに行こうねって思っていたのに、それが果たせなかったのです。それで、今日はその娘の為に、せめてお子様ランチを頼んであげたかったのです。」

 

 店員は話を聞き終えた後、「かしこまりました。」と答えました。

 

 そして、その夫婦を二人掛けのテーブルから、四人掛けの広いテーブルに案内しました。さらに、「お子はこちらに」と、夫婦の間に子供用のイスを用意しました。

 

 やがてそのテーブルには、お子様ランチが3つ運ばれてきました。その店員は笑顔でこう言いました。「ご家族で、ごゆっくりお過ごし下さい。」

 

 この行動はマニュアル違反なのですが、上司や会社側(ディズニーランド)がこの店員をとがめることは、もちろんありませんでした。この夫婦から後日届いた感謝状にはこう書かれていました。

 

「お子様ランチを食べながら、涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように、家族の団らんを味わいました。こんな体験をさせて頂くとは、夢にも思っていませんでした。もう、涙を拭いて、生きていきます。また来年も再来年も、娘を連れてディズニーランドに行きます。そしてきっと、この子の妹か弟かを連れて行きます。」

 

 少し泣けてしまう話しですが、マニュアルだけでない本当のCS顧客満足とは、こういう真心(まごころ)に通じるものではないかと思いました。