第19回 脳活 〜脳を活性化させる〜

 最近、どうも顔や首の周りなどがベタ〜とする感じがするので、いよいよ中高年の最盛期に入り体の油分や老廃物の排出が佳境にきたのかな、それにしても首もべとつくのは少しおかしいとは思っていた。

 

 そうしたある日、起きてからシェーバーでヒゲを剃った後に、いつものようにアフターシェーブローションを顔につけ、ついでに首にも少しふりかけみてふとイヤな感じがした。

 

 急いで居間から老眼鏡を持ってきてそのローションの瓶のラベルを見たら、なんとそれには「ヘアリキッド」とあった。私はヘアリキッドを使わないので、アフターシェーブローションと勘違いして購入し、この2か月間ほど整髪用油を顔と首に馴染ませていたのだ。180ccの容器を3分の1以上使ったあとであった。

 

 以前にも、塗り薬を歯磨きチューブと間違えて歯をだいぶ磨いた後に気付きひどい目にあったことを思い出した。

 

 今までにも、世間は 「就活」「終活」「婚活」「離活」などをもてはやし、最近では「妊活」「保活」「温活」「寝活」「ソー活」「友活」なども取り上げているが私は今回「脳活」について書いてみた。

 

 「もう若くはない」とか「最近、年だ」とかいう言葉は我々のような年配者だけではなく、まだ二十代の若い人たちからも時々話しているのを耳にすることがある。

 

 たぶんそれは、以前よりも体力が落ちたとか、物忘れしたことなどを意味しているのかもしれない。私はお寺のお坊さんが高齢でもボケないで活躍しているのは、毎日のようにお経を読んでいるせいなのではないか、とくに声を出す音読を日常的にしていること、或いは写経をしたり戒名を考えて筆にしたためたりすることで、より脳が活性化しているのではないかと考えている。

 

 このように声を出したり、ノートや紙に字を書いたりするアウトプットをいつもしているのは政治家や落語家などもそうであり、こういう人たちは長生きで達者な人たちが多い。パソコンで文章を作ってばかりいるとノートや黒板に漢字を書く時に、以前は覚えていた簡単な字も書くことができなくなっていることがある。

 

 東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授の講演を聴講したことがある。この先生は任天堂の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で有名だが、数億円?という印税を全部大学に入れ、自分の研究室などには全く入れないで大学のために使ったという志しの高い方だ。川島教授の話によると「作動記憶トレーニング」という簡単な計算や問題を毎日短い時間でもやったりすると、アルツハイマーの老人も症状が良くなったという事例が多々あるという。そして、通常のゲームやほとんどのテレビ番組は脳に抑制がかかるため、長い時間それをプレイしたりや見てばかりいると、考える能力や感情のコントロールに影響を与えることを教授は危惧されていた。体にとって食べ物の栄養素や運動が大事なように「脳」にとっても外部からの良いファクターが必要であると改めて気付かされた。

 

 ところで、日本は長寿大国というのは周知の事実だが、企業の長寿大国でもあるという。日本には百年以上続いている会社が3500社以上あり、その数は世界の企業の半分以上あるそうで、個人商店も含むと5万社以上という。しかし、リーマンショック以後、企業の継続はより困難になってきており現在は企業の存続歴史の分岐点になる難しい時代だ。企業長寿の要因は、明確な経営理念、長期的な視点に立った経営、伝統の継承の一方革新に取り組む、従業員を大切にする、地域社会に貢献するなどがあるようだ。

 

 少し横道にそれたがやはり重要なのは、抑制されやすい脳を開放させ心身ともに健康活発な人生をおくるためには、「脳を活性化させる」ことを実践していくことである。 

 

 「この頃物覚えが悪く、特に最近のことをよく忘れる」ということを聞くが、何かやろうとして隣の部屋へ行くと何をしに来たのかを忘れたり、何十年前のことはよく覚えているのに、昨晩のおかずは何だったのか思い出せないことがある。

 

 それは例えば、八分位で満タンになっていないコップに水をそそいでいくと、水は上部から流れ落ちていってしまう。貯まっていた水が古い記憶だとすると、そそいだ水は最近の記憶で流れるのは昔のそれよりも最近のものなので、どうしても忘れるのは最近の記憶ということを聴いたことがある。

 

 では、どうしたらいいのかというと、水をそそぐ時に古い水をかき回しながらやる、つまり日頃脳にいろいろな刺激を与えてやればいいということになる。脳の衰えを止めることは難しいが、仕事でも趣味でも家庭や友人でも変化のある日々を過ごすことをいつも心がけることが大切なのではないかと思う。