第16回 会社と人のための「健康経営」

 昨年10月から今年の3月にかけて大変親しい人たちが4人逝去された。その方たちとは30年以上のお付き合いがあり、いつも顔をあわせていた方や年に何度か会ってもなんでも話し合える朋友(ポンユー)もいた。そのうちのお二人は数か月前までは至って健康そうだったのに同じ病室、同じ病気で3か月の間に立て続けに逝去されてしまった。また、定年でようやく念願の東南アジアフリーの旅を楽しんでいたО氏はタイで2か月目に客死されてしまった。メルマガも今年の1月から発信しようと考えていたのだが、そういうこともあり気分がかなり落ち込み延び延びになってしまった。

 

 そこで、やはり人間にとって一番大事なのは「健康」ということを痛感したのだが、今回は人と会社の「健康」について考えてみたい。国などで推奨している「健康経営」は「組織が、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とそれを定義付けている。

 

 健康に関しては会社と人とは共通点が多い。年に1回の定期健康診断は、今まで過ごしてきた生活の状況がしっかりと出てくる。身長・体重・視力などの測定検査、胸部や胃のX線検査、血圧や血液組成の検査、特に大事な心電図検査などもある。また、運動能力をみる体力診断や健康な生活を送るために参考になる体組成計測もある。会社も年に1回決算を実施し、1年間の企業活動の結果を把握することになる。

 

 会社では売上、経費、利益といった年間の経営成績を確認するとともに流動比率や自己資本比率といった会社の体力を計測するための経営分析も行われる。まさに会社の決算書は、個人の定期健康診断書に相当し、毎年前期迄の結果と比較することにより、体の変化(会社の変化)の状況を適格に捉え、今のままで良いのか、それともどこか悪いのかを掴み、状況に応じて必要な手当(活動)をうって行くことになる。

 

 従業員の健康管理・健康づくりの推進は、 生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、 かつ、企業におけるリスクマネジメントとしても重要である。

 

 もし、定期健康診断書や決算書に異常値が出た場合は、自助努力はもちろんするのだが、症状によっては医者(コンサルタント、会計事務所や金融機関)の診断を仰ぎ処方箋により投薬や治療(改善対策、資金対策)を実施する。体質改善のために運動や食事、生活習慣などの改善に努めることが大事である。

具体的にはウォーキングや筋力・柔軟性のトレーニングなどで持久力やパワーアップそしてダイエットなどを目指すことになる。これは会社で言えば体質の維持向上に努め、利益体質を構築することであるが、具体的には営業品目の見直しや顧客満足度の向上のための品質・納期の向上、接客対応の向上、営業活動の強化、HPの充実といった売上向上のための施策、各種コストを削減するための改善活動、省エネ活動等を継続的に行なう、売掛金の早期回収等々といった活動である。

 

 しかし、半年や1年間だけなど期間限定ではせっかく中性脂肪が落ち筋力がつき息切れしなくなりスリムになったのに、また元に戻ってしまう。人は体質改善を継続してやらなければ元に戻ってしまう様に、このような活動は常時継続していかねば、企業が健全でありつづけることは難しい。

 

 もちろん「心」の健康もあわせて大変重要である。「健全な精神は健全な身体に宿る」という格言があるが、健全な精神とは常に前向きに考え良い意味でのコミュニケーション力や素直な気持ちで何事にも接することであり、まさしく「明元素」明るく元気で素直な気持ちを日常的に実践できる気持ちを持つことである。いくら体力が優れていて腹筋が割れていたり又長い距離を走れたりしても、健康な「心」を有する人間でなければ、本当の意味での健康とはいえない。

 

 会社もいくら利益が出ていたとしても、それを同族や一部の経営者だけに偏ったりせずに、社員や社会に還元することが会社の健康のためになるはずである。

 

 会社自体も突然死ではなくとも、いつの間にか死に至る『ゆでガエル』状態を防ぐためにもいつも自分や自社の健康管理を欠かさないようにしたい。

 

 会社の体質は一朝一夕では良くすることが難しいが、凡時徹底を実践しその強化をはかり社員と会社が共に健康になれば、長期間安定した健全な会社運営が実現出来るのではないかと思う。