第220回 震災復興支援の影 〜あるNPOのこと〜

第220回 震災復興支援の影 〜あるNPOのこと〜

ロシアのウクライナ侵略の出来事で、新型コロナが脇役のようになってしまいました。

そして、3月11日の東日本大震災も地元のマスコミは数日前から取り上げていましたが、人々の関心は今までと違うような気がします。

それでも、復興の状況や震災に遭われた方や関係者の記事が連日のように報道されており、もう11年も経ってしまったのかという思いがあります。

そういう思いの中で、現在は全くといっていいほどにテレビや新聞でも見聞きしなくなった震災にまつわった、ある忌まわしい事件がありました。

それは、震災被害に遭った町が被ったあるNPO法人による前代未聞の2次被害です。

事件は2011年から2012年にNPO法人「大雪りばぁねっと」が、岩手県山田町から委託された緊急雇用創出事業のうち半分以上の6億7000万円を不適切な処理をして、多額な使途不明金も出し代表や関係者が多数逮捕されたというものです。

このために「多方面に大きな影響を及ぼし、町政への信頼を傷つけ、町の歴史に汚点を残した前代未聞の事件」として、山田町復興記録誌別冊「大雪りばぁねっと事件」その背景と教訓、という記録を山田町が2021年に作成したほどの重大事件だったのです。

あまりの壮絶な事件だったためか、染井為人の小説「海神わだつみ」のモデルにもなりましたので、読むことをぜひお勧めします。

 

事件の経過は次の通りです。

2011年3月 東日本大震災発生、岡田代表(以下О)率いる「大雪りばぁねっと」が大混乱の極みに遭っていた山田町で支援活動を開始する。

町の信頼を次第に得たО代表は、復興支援参与や復興支援アドバイザーなどの辞令が交付されると同時に、町と雇用事業の委託契約を締結する。

そこからО代表の暴走が加速、トンネルのリース会社を作り1億円以上かけた浴場、遺体の捜索に使用するとして1千万円の水上ボートや10台の水上バイクなどを購入する。

率いるメンバーの幹部には高級ブランドアルマーニの制服を着用させ自分は高級スーツ、さらにО代表は東京や北海道に何度も出張しイタリアにも行ったり、叙々苑や銀座の千疋屋での飲食などの証言もある、そして自分の冷凍庫には高級肉やイクラやタラバガニなどもふんだんに置いてあったという。

О代表の暴走は続き、山田町活動1周年の記念行事として北海道から多数のニューハーフに交通費を支給し、さらに莫大な舞台設営費や高級羽布団20組などを購入してショーを開催したのである。

事業の不適切処理はそれだけではなく、勤務実態のない北海道にいる母や妻への給料の支払いも後日に発覚してしまう。

2012年12月 О代表が「お金を使い切った」と町に申し出て、残高が75万円しかないことがわかり、復興支援として雇用されていた町民の従業員140人全員を解雇し、給料も未払いとなった。

実態が明るみに出てもО代表は、報道人の前では声を荒げ記憶にないを連発し、その後に起訴されても反省や謝意は一切なく2016年に懲役6年の実刑判決が下された。

 

山田町がО代表に事業委託するうえで、履歴書や運転免許証のコピーなど再三の催促にも応じず、主幹や参与等に任命し徴用したことが問題の大きな発端であると、その後に報告された町の調査資料にありました。

やはり「小事は大事」と小さなことを見逃すとやがては大変なことになるというたとえそのものであったのだと思います。

会社でも役員の小さな公私混同がわかっていても小事として見逃すと、やがて会社に致命傷を与えるような深い傷を負わせる出来事になってしまいます。

やはり小事のうちにその芽を摘むように、その近くにいる人は行動しなければならないのではないでしょうか。

現在のロシアのプーチンのような結果にならないように・・

 

ちなみに、服役したО代表は7億円近くも使い込みしたのですが、6年目である2022年の今年には出所ということです。