第214回 「あの場面の定番曲」徒然考

第214回 「あの場面の定番曲」徒然考

生活に必要なものはよく衣食住の3つと云われていますが、もう1つ必要なものとして音楽も欠かせません。

私はPCでいつも音楽を流しながら仕事をしていますが、曲にはあまりこだわりがなくどちらかというと、スローテンポのジャズや歌なしの演歌や映画音楽がメインです。

現代の人は自分で好んで聴く音楽とは別に毎日の生活の中では、知らず知らずにいろいろな音楽を聴いていますので、そのせいかその音楽が流れただけで、その状況が思いだされることがあります。

 

たとえば、家のお風呂でお湯はりをしているとお知らせ音楽と一緒に「♫~おふろがわきました」が聞こえてきますが、この曲はドイツの作曲家エステンの「人形の夢と目覚め」といいピアノの初級者によく弾かれているようです。

もしも偶然にこの音楽をどこかで聞いたらお風呂に入りたくなるかもしれませんので、間違っても服を脱ぎませんように。

 

いろいろな問い合わせでコールセンターを利用して、お待たせの時に流れる曲のベスト1は、イギリスの作曲家エルガーの「愛のあいさつ」、以下「そよ風の誘惑」「大空に歌おう」「峠の我が家」と続くそうです。

どうしても待たされている間は長く感じられるので、イライラしないように気持ちをゆったりした音楽が取り入れられているようです。

 

仕事でお付き合いのある会社に電話した時に「ちょっとお待ちください」と云われた後に流れてくるのが、エディットピアフの「バラ色の人生」が流れたりすると、なかなかの名曲なのでその会社のセンスを見直してしまいます。

以前はベートーヴェンの「エリーゼのために」が、電話保留音では圧倒的でしたが最近は様々な曲になったようです。

 

仙台七夕祭りの時に街で流れる定番曲は、「青葉城恋歌」です、「広瀬川流れる岸辺~♪」で始まり「♪あの人はもういない~♫」で終わるのですが、この曲は終わってしまう祭りのもの寂しさと去り行く夏に本当にぴったりで、いろいろなことが想いだされます。

島倉千代子の「七夕おどり」も仙台七夕祭りの定番曲の双璧で、「キンキンキラキラ お星さまも嬉しそう~♫」は皆で楽しむお祭りにぴったりの曲ですので、今はもういない島倉千代子さんに毎年感謝しています。

 

スーパーに行くと魚売り場では、「さかなさかなさかな~さかなを食べると~あたまあたまあたま~あたまが良くなる~♪」と何度も流れてきて、肉を買おうと思ったのに口ずさみながら思わず魚に手が伸びてしまいます。

この曲は「おさかな天国」といって、全国漁業協同組合連合会のキャンペーンソングとして制作された楽曲とのことです。

 

学生時代にはパチンコ屋で閉店まで粘ったことが何度もありましたが、その時間になると必ず「蛍の光」が流れて店に残っている客たちは慌てて景品交換所へ向かっていました。

今と違ってパチンコ玉をカウントする機械が無く、プラスチックの計数皿で200個ごとに計算するので時間がかかり行列になってしまうのです。

その印象があるので「蛍の光」の名曲を聴くと、卒業式よりもどうしても店などの営業が終了する感覚が今でも抜けません。

 

昔の人気テレビ番組「8時だよ!全員集合!」で加藤茶のコントで使われた「タブー」は、ストリップショーの定番曲なので当時の父親たちは、曲が流れると家族が笑っている傍ら自分が以前に密かに観たそれを思いだしていたのかもしれません。

「タブー」は「南国の島を舞台に、青年と乙女との許されぬ愛」を描いた1931年の同名のアメリカ映画を観てマルガリータという作曲家が作ったラテン音楽ですが、加藤茶は独特のひらめきでストリップショーを見てコントに取り入れたようです。

 

人生の一大イベントにも音楽は欠かせません。結婚式には「ジャンジャジャジャーン♫」でお馴染みのメンデルスゾーンの「結婚行進曲」、告別式にはサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」がよく使われます。

アメリカでは、ジョン・F・ケネディの葬儀で使用されてからバーバーの曲が有名になり、それから葬祭や慰霊祭などの定番曲となってしまい、彼は「葬式のために作った曲ではない」といつも云っていたそうです。

ちなみに、この曲は日本でも昭和天皇の崩御の際にも流れていました。

 

その他にもマジックでは「オリーブの首飾り」、学生時代の定番曲としては、卒業式には「贈る言葉」や「卒業写真」、運動会には「天国と地獄」、表彰式では「見よ、勇者は帰る」等々があります。

私達はその曲を耳にすると、タイムマシンに乗ってその場面やその時代に一瞬にして戻ったような気持になりますので、音楽というものは本当に素晴らしいものです。

 

「年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず」という言葉通り、「年ごとに花は変わらず咲き、花を見る人は年ごとに変わってしまう」のですが、音楽も花のようにあまり変わらないのかもしれません。