第208回 人の体は面白い 〜呼吸器系編〜

第208回 人の体は面白い 〜呼吸器系編〜

新型コロナのせいかそれとも体の経年劣化であちこち部品が傷んできたせいか、今までに病気や事故で何度か入院したことを時々思いだすことがあります。

特に30年前に入院して肺の検査をした時の経験は、今思いだしても身震いしてしまいますが、その内容については後述するとして、だれでもが気にかかる人間の体の不思議について今回は取りあげてみました。

 

「狸の金〇〇八畳敷き」という例えがありますが、人の肺もそれに劣らず大きいのです。肺の大部分を構成している肺胞の表面積は60~70㎡にもなり、バトミントンコート1面分くらいに匹敵する大きさで、さらに1度深呼吸するだけで約100㎡にも広がるそうですから「人の肺は60畳敷き」という位の巨大な面積になります。

 

安静時に呼吸を1回すると、肺に吸い込まれる空気の量は男性の場合500ccペットボトル1本分位、1分間に約16回呼吸をすると8000ml近くの大容量の空気を吸うので、人は1日にドラム缶50本くらいの空気を吸っていることになります。

また、男性は右の肺が370g位、左の肺は心臓があるために2割ほど小さく290g位と、左右の大きさはかなり違うようです。

 

その肺に空気を出し入れするのは鼻ですが、実は人の鼻呼吸は片方の穴しか使っていないのが当たり前で、それを医学的には「交代制鼻閉」といいます。

ただしそれは無意識の状態での呼吸時で、鼻の奥にある骨が片方ずつ交互に閉まることによって、2時間位に1回の周期で片方の穴からだけ空気を送り込むそうです。

私達は鼻の他に口でも呼吸をしますが、それは言葉を使うのが人類だけ、つまり哺乳類で口呼吸をするのは人間だけなので、誤嚥性肺炎などにもなるのかもしれません。

 

鼻の面白い「不思議」は他にもあり、鼻水は一日に2ℓから6ℓ作られる、「鼻毛」の正式な読み方は「はなげ」ではなく「びもう」という、くしゃみの風速の最高時速は新幹線よりも早い時速400kmにもなる、目を開けてくしゃみをすると眼球が飛び出し「眼球脱臼」になってしまうから必ず目をつぶってしまう、などがあります。

 

鼻の土台は顔ですが、そこには「顔ダニ」というニキビダニが住み着いているのは良く知られており、大きさは0.2~0.3ミリほどで、誰の顔にも我が宮城県民の人口に近い約200万匹位が住んでいるというのには驚いてします。

このダニが原因で起こる病気はありますが、その反面害はあまりなく余計な皮脂を食べて顔面の脂のバランスを保つ効果も大きく、1つの家(毛穴)には5~6匹住んでおり、産卵から死ぬまでの寿命は約14日とほとんどのダニ達は慎ましく暮らしているようです。

ダニというと抵抗がありますが、サメや鯨にくっついているコバンザメのように、顔ダニは人と共存共栄しているようです。

 

最後に前述した昔私が経験した肺の検査のことを少しご紹介します。

会社恒例の健康診断した後に肺に少し影があるということで、入院して検査をすることになりました。

N総合病院で再検査しましたがよく分からず、更に詳しく調べることになりT総合病院に転院しました。

何種類かの検査をした後に「肺の影のある部分に造影剤を入れて検査します。」と医師に言われ、私は胃のバリウム検査は何度もしたことがあるので、気軽に承諾しました。

検査は麻酔をせずに鼻の中へチューブを入れて肺まで挿入し、更に造影剤を何度か注入しレントゲン撮影するのです。

医師たちの声が聞こえる間、チューブの触手で細胞採取の為にひっかくので肺がチクチクと痛みますが、それをこらえているうちに検査が終わりました。

その後医師に「肺にバリウムが入っているので、今夜は頑張って咳をして出すようにしてくださいね。出さないと固まってしまいますから。」とやさしく告げられました。

その日はベッドの上で涙を流しながら喉が痛いのを我慢しつつ、ゲホンゲホンと少し血の混じったピンク色のバリウムを出していたら、いつのまにか夜が白んでいました。

 

30年前の検査の経験でしたが、それから医学も進化し現在は高性能のCT検査やМRI検査もあり、辛い検査はほとんどない時代になったので安心です。