第203回 ハイブリッド考 〜アヒルが空を飛んでいた!〜

第203回 ハイブリッド考 〜アヒルが空を飛んでいた!〜

目の前をアヒルが飛んでいた、というよりも川面よりも7、8メートル上空を一羽のカルガモと並走するように、大きく旋回しながら悠々と10分位優雅に飛行する姿に、つい口をあんぐり開けて見入ってしまいました。

アヒルは数メートルしか飛べないというのに、渡り鳥がほとんどいなくなった初春の少し寒い日に、そのアヒルがなんと野生のカモと一緒に飛んでいたので驚いてしまったのです。

 

場所は仙台市の真ん中を流れている広瀬川の河川敷、私のいつもの散歩コースでの出来事で、6年ほど前からカモやハジロなどの鳥の中に1羽のアヒルがまぎれ込んで泳ぐのを見かけるようになりました。

その2年後に、親子のアヒルを2羽見かけた後はしばらく見ることはなかったのですが、今年の冬に再び1羽のアヒルを見つけることができました。

その飛ぶアヒルは初めに見かけたアヒルの2代目、つまりカルガモとのハイブリッドではないかと確信したのでした。

 

日本では戦後に外国人との間に生まれた子供たちを少し蔑称気味に「あいのこ」と呼んでいましたが、私は彼らこそ国境を越えて愛し合ったまさしく「愛の子」と思うのです。

その証なのか、天からの贈り物なのか、今やその愛の子たちは数えきれないくらいに日本や世界で活躍しているのです。

異国人同士の間に生まれた子供は、以前には「あいのこ」や「混血」とよばれ、次第に「ハーフ」に変化してきましたが、現在は「ハイブリッド」の呼び方がふさわしいような気がします。

ハイブリッドというと車のことが真っ先に頭に浮かびますが、それは異なる動力源を複合して走行できる自動車のことで、現在では多数の車に取り入れられています。

 

世の中には混ぜることや合わせることで、高機能になり重宝されて使われている事例が数限りなくあります。

製造業では当たり前にやられている「改善」には排除、結合と分離、入替えと代替、簡素化の4原則がありますが、この中にある結合がまさしくハイブリッドなのです。

 

新型コロナの治療薬として米国の元大統領が使って劇的に症状を抑えたという「コロナ抗体カクテル療法」が昨年話題になりましたが、医学関係には薬品同士を組み合わせて効果を出すということが珍しくないようです。

 

私の好きなお酒の世界でもカクテルは大活躍で、若者たちのアルコールの主流はチューハイやサワーなどのカクテルですし、新型コロナが流行る前にはおしゃれなカクテルバーも人気があったようです。

ウイスキーもシンプルなモルトウイスキーと同じようにブレンデッドウイスキーも人気があります。

ブレンデッドウイスキーはモルトウイスキーとグレーンウィスキーの2種類をブレンドしたもので、モルトよりも飲みやすいのでアルコール初心者や若い人に好まれるようです。

 

フード業界ではカレーハウスCoCo壱番屋は、創業者夫妻が各メーカーの各種のカレールーをいろいろと組み合わせて苦心惨憺しながら、その味を作り出したという話しはあまりにも有名です。

 

私も以前にFCのラーメン店を営業していた頃、その本部が九州だったので豚骨スープしかなく、それが苦手なお客さん用にと醤油ラーメンをオリジナルで開発したことがありました。

ただ九州の味も捨てがたいので、その味も出したく本部の材料と宮城県地元の材料を調合して「特選醤油らーめん」を作り、いつも店内売り上げの2番目にランクすることができました。

 

現在では雑種犬といわず、ペットショップではミックス犬としてハイブリッドの犬を血統書付きの犬と一緒に販売しています。

昔は飼い犬というと雑種犬が王道で、ピュアな犬はお金持ちかちょっと気取った家庭で飼うものという認識でした。

それでも、雑種犬は味噌汁ぶっかけご飯や残り物を与えてもエサの好き嫌いがなく、なんの注射を打たなくともそこそこ長生きし、主人にはなつき他人には吠えまくるという、現在の至れり尽くせりの過保護な犬たちとは天と地ほどのエコで飼いやすい別次元の犬種でした。

 

いろいろと思い巡らしていると、未来の人類は地球上すべての人種をブレンデッドして人類皆兄弟親戚になり、数百年後には戦争や紛争も起こさないバランスのとれた心と、新型ウイルスをも跳ね返す強靭な体の超ハイブリッド人間になることを夢見てしまうのです。