第173回 企業の社会貢献とは? 〜知らないと◯百万円の損・・・〜

第173回 企業の社会貢献とは? 〜知らないと◯百万円の損・・・〜

 日本の企業は甚大な自然災害や金融危機などの幾多のショックを乗り越えてきましたが、改めて考えてみると企業を継続させるということは何のためなのでしょうか。

 

 企業を起こし成長させるまでには、経営者は意識しないかもしれませんが段階的な目的をもっています。

 もちろん企業の成長段階のパターンについては、幾多の専門家が諸説を論じておりますがそれらとは少しスタンスが違う4段階の目的があると考えています。

 

 起業した時には自分のためや家族のため(食べていくため)、そして次の目的は社員のためとなります。 少し余裕が出てくると3段階目には得意先や仕入れ先のため、やがて業界などで認められてくると地域社会や世の中のためにという社会貢献も目的となります。

 

 自分の経営している企業や自分の勤務している会社が、これらの4段階のうちどの位置にあるのかを意識してみると、自分の生き方や進むべき方向のヒントになるはずです。

 

 社歴が長く老舗といわれる企業の場合は、ほとんどが従業員の福利厚生の充実や社会貢献のために何らかの施策を行っているところが多いようです。

 しかし中には権力争いや私利私欲を優先して、この4段階から外れてしまい「三方よし」そっちのけで企業を営んでいる経営者もいるようです。

 

 多くの人達が「一日一善」を実践することを心掛ければ、住みよい世の中になるはずですが、同じように企業も「一日一善」ならぬ「一か月一善」や「一季一善」などを事業計画に入れることも必要ではないでしょうか。

 そして、年度末にはどういう善いことをしたのか、1年を振り返ってみると良いと思います。

 

 4段階目の「社会貢献」は難しくとも、自社がどの辺りのステップにあるのかを認識しながら、初めは当たり前のことから始めても「社会貢献」ができるのではと考えます。

 

 弊社のスタッフは仕事上、小規模の企業や創業して年数の浅い企業にも訪問することがあります。諸々の事を相談された時に、その企業のパンフレットがないのは当たり前で、就業規則がないことも珍しくありません。

 従って36(サブロク)協定を説明しても、その経営者は首をかしげて「?」という反応を示されることもあるそうです。

 中には最低賃金という概念も頭になく、当然社員に支払われるべき賃金も基準に満たず不足していた企業もあったようです。

 就業規則を整備し36協定や最低賃金も遵守することにより、従業員の生活を守り向上させることは第2段階目のステップですが、それでも広く考えれば「社会貢献」ということになるはずです。

 

 「障害者雇用納付金制度」という制度があり、昨年国会やマスコミで大きく取り上げられました。

 この制度は「民間企業、特殊法人、国及び地方公共団体は、常用労働者に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある」という内容です。

 

 具体的には常用労働者が100人超の事業主は、障害者について2.2パーセントの法定雇用率を満たさないと、不足1人につき5万円の障害者雇用納付金が徴収されます。

 

例えば、従業員が110人の会社の場合、雇用義務のある障害者数は以下のように計算されます。

例)110人×2.2%=2.42人 端数は切り捨てるので2名の雇用義務がある

 

 2名を雇用していないと1人当たり月5万円の納付金が発生するので、年間120万円と大きな金額になってしまい、それが数年間続いたと思うとぞっとしてしまいます。また2021年3月末までに法定雇用率が2.3%に引き上げることも確定されています。

 

 障害者雇用納付金制度には法定雇用率を達成している企業に対しては、調整金や報奨金が支給されます。

 調整金は超過1人当たり月額2万7千円なので、年間にすると32万4千円になります。又、報奨金はペナルティーのない100名以下の企業に支給されるもので、超過1人当たり月額で2.1万円です。

 

 もしも前述の110名従業員の企業が、障害者を全く雇用していない場合と3名の障害者を雇用していた場合は、1000万円の利益が出た時の決算の数字は次のようになります。

 

障害者を全く雇用していない場合

利益1000万円-納付金120万円=最終利益880万円

 

障害者を3名雇用していた場合

利益1000万円+調整金32.4万円=最終利益1032.4万円

 

最終利益の差が152.4万円にもなってしまうのです。

 

 その他にも身障者を雇用すると、1人年間120万円を2年間支給や短時間でも1人年間80万円支給されるなど、さまざまな助成金の制度がありますので、ハローワークの担当窓口に相談されることをお勧めします。

 

 多岐の分野で考えられる社会貢献ですが、調整金や報奨金や助成金が入るのはそれが目的ではなく、そのお礼という認識でこういう制度を積極的に活用すれば、企業の存在意義が増すのではないかと考えますがいかがでしょうか。