第117回 UNよもやま話 〜VR体験して思ったこと〜

第117回 UNよもやま話 〜VR体験して思ったこと〜

 バーチャルリアリティー(以下VR)を初めて体験する機会があった。それは東北学院大学機械知能工学科の佐瀬一弥氏の講演時にデモとして、棒状の道具でVRナマコを触ってみるという触感体験である。ゴーグルをかけると目の前に大きなナマコが現れ、それを棒でつついたりなぞったりして見ると、確かにぐにゅっとしたナマコの手触り感がリアルに指先に伝わった。

 

 佐瀬先生は他にも「脳外科シミュレーター」を作ったりして医学にも役立つような研究をされているが、「触覚体験!うんこツンツン」というVRも制作している。触覚デバイスの先端部を指に固定させ、大腸がんの感触と共にバナナ状、泥状、カチコロの3種類のUNの触覚体験もできることを紹介されていた。それは介護時に一番抵抗があるUNの感触に慣れておく目的だそうで、そういう発想もあるのだなと改めて感心してしまった。

 

「きたない」「くさい」「きもちわるい」の3K界のトップに君臨するUNは、一般の人には忌み嫌われる存在である。しかし、体にとって必需である食べ物と同時に、出口の廃棄物として大変に重要なものでもある。健康診断の時には血液と共に必ず提出しなければならないし、1週間も排出できなくなったらとんでもないことになる。

 

 介護でも毎日何度もやらなければならないのが、排便の始末の作業である。少し不謹慎な話しになるのだが、勘弁していただきたい。我が家では大型犬を2頭飼っており、両方合わせて体重が60㎏以上ある。その彼女らの(両方ともメス)UNの片づけが頻繁にある。人間以上に餌を食べるので、その量がただ事ではなく、1日に3度は必ずいたすのでまだ生みたて(我が家ではUNをすることをいう)の生暖かいそれをビニール袋に手を入れ拾い処分する。その時の感触で、ある程度の健康状態がわかってしまう。

 今ではその作業は日常やることの一つになり、私も妻もほとんど気にしなくなっている。時々は袋が破れていたりして、厄介なことになったりもするが今ではあまり大騒ぎせず、朝食時にその話題が出ても二人とも平気になってしまった。

 

 妻との会話では「どちらかが介護状態になり、シモの始末をすることになっても私たちは慣れているから大丈夫かもしれないね。」などと、どちらからともなく話が出たりする。

 昔は犬猫をどこの家でも飼っており、そして馬や牛や山羊や鶏なども身近な存在だったので、当然彼らのUNはいつも目にしたり片づけしたりしていた。家庭では3世帯で暮らしていることや、家の中で祖父母が寝込んでいてその世話を家人がしているのも珍しくなく、赤ん坊のおむつと一緒に大人のおむつも庭先に干してあることも、地方ではあたりまえのことであった。

 今の世相はあまりにも「臭いところに蓋」が日常化していて、本来我々が目をふさいでいてはいけないことまで知らないことにしているのかもしれない。

 

 前述の「触覚体験!うんこツンツン」のVRは幕張メッセで開催されたニコニコ超会議2018では、それを体験したいという人たちで長蛇の列を作るほどの人気を博したそうである。そのVRを一緒に作成したのが「日本うんこ学会」で、その名称とは違って真面目に大腸がんの撲滅のために活動している非営利団体である。この団体は横浜の医師が代表としてUNをツールにその活動を繰り広げている。

 

「運も大事、UNKOも大事」との格言を私なりに頭をよぎった次第である。

追記) 「触覚体験うんこツンツン 〜排泄ケアへの挑戦〜」のYouTube