第111回 プロとアマの違い 〜3球で年収〜

第111回 プロとアマの違い 〜3球で年収〜

 プロ野球のレギュラーシーズンが終わり、CSクライマックスシリーズに残らなかった球団のファンの関心は、戦力補強として球団がどういう手段をとっていくのかということや、ドラフトの目玉選手を獲得できるのかという2つではないでしょうか。

 

 このような時期につい考えてしまうのがプロとアマの違いについてです。東北楽天イーグルスから大リーグのニューヨーク・ヤンキースに入団した田中将大投手は、高額の年俸で話題をさらったことがありました。

 田中投手とヤンキースとは7年契約、約155億円だそうなので、おおよそ年平均にすると22億円になります。

 年間に投げる球数が3000球として、1球あたり幾らになるか、なんと73万円になってしまいます。重ねて言います、1球73万円ですぞ・・・

 高校生の新卒のほぼ1年分の給料が、たった3球投げただけで稼いでしまう、これがプロなのですね。

 

 田中投手が東北楽天球団に入団した2007年の年俸は1500万円でしたから、7年後のヤンキースに入団時には実に150倍近くになった計算になります。やはりアマではこういうことは絶対にといっていいほど考えられません。

 

 一般的には高校や大学を卒業したら、ほとんどの人はどこかの会社に入ることになります。そして、会社で仕事を覚えながらゆったりとしたカーブで給料が上がっていきます。今だったら、5パーセント前後でしょうか、特に景気の良い会社であれば2桁で上がるかもしれませんが、大多数の人は1桁でしょう。

 

 ビジネスマンになるとよく上司や先輩社員が言うことがあります。

「本番で仕事をしながら覚えていこう」

 

 会社は新入社員に給料を払いながら、先輩社員が手取り足取り教えながら営業をしたとします。新入社員は先輩と一緒に廻りながら、やがて一人で指示されたエリアや顧客を訪問してモノやサービスをPRして、売り上げ目標を少しでも達成しようと頑張るでしょう。しかし、思い通りには中々いかず、売り上げは目標どころかほとんど売ることができませんでした。

 新入社員が肩を落として帰社してくると、ブラック企業ではない限りほとんどの会社の先輩は「本番で仕事をしながら覚えていこう」と言います。

 それは日本の会社では当たり前で、実践しながら育てていこうという風土がどこの会社でもあるからです。

 

 その是非はともかくとして、プロの世界を考えてみましょう。

 プロの立場からからすると「本番で仕事を覚えるのは筋違い」という考え方というか、そういう世界ではないというのがプロであるということのようです。

 そして、アマ(ビジネスマン)とプロの違いは、「成果」に対する厳しさが格段に違うということです。もちろん、ビジネスマンのプロという存在はありますが、プロから見たビジネスマンはほとんどがアマに見えているかもしれません。

 例えば、プロ野球選手はそもそも傑出した実力の持ち主でなければプロ球団には入れませんし、入団した後も投打走守を常に向上させる努力をしなければ、球界から去らざるをえなくなります。

 

 大相撲の力士やプロテニスプレーヤー、プロゴルファーなどのスポーツ界は私たちでもその厳しさは引退やオフシーズンに実感できます。

 

 そして、プロとアマの大きな違いの一つに、「練習量の差」もあるのではないでしょうか。

 プロは極端に言うと、いつでもどこでも練習や自分の技術を高めるための努力をします。自分の技術を高めるためには、寝ても覚めてもというほどの時間を費やし、お金もかけるようです。大リーガーのイチロー選手は、オリックス時代に死球を受け、回復してチームに合流した時に9時間750球を打ちまくったという話しもあります。

 

 9月に毎年私の地元で催される「仙台クラシックフェスティバル」という音楽のイベントがあります。今年はプロの演奏家や楽団が3日間にわたり、87のステージにあがり公演しました。

 4つの施設10の会場で66組の音楽家が国内外から参加し、素晴らしい演奏や歌を披露しました。私はそのうち11公演を鑑賞しましたが、どれも素晴らしいステージでした。

 独演したギター奏者の超絶技巧、ピアノのダイナミックで繊細な演奏、テノールとバリトンのマイクなしで会場内に響き渡る声、フルートやチェロの心に沁みるような旋律、そして仙台フィルハーモニー管弦楽団のファイナルコンサートなど。やはりプロによる演奏はアマとは格段に違い、心に響くものがありました。

 

 彼ら音楽家たちは、本番の演奏の何十倍何百倍も練習したことでしょう。プロと自覚するビジネスマンでも、そのくらいの量の練習を報酬もなしにやる人は、ほとんどいないでしょう。

 公演が終わった後に、私はプロとは目標やハードルに対して、できる方法を考えながら成果が出るまで何度でも挑戦する人ではないかと思ってしまいました。