第91回 続続・グローバルな人材争奪戦 〜日本に外国人が来なくなる!!〜

第91回 続続・グローバルな人材争奪戦 〜日本に外国人が来なくなる!!〜

 相変わらず経営者へのアンケートの結果では、第一位が人材不足である。日本の企業で外国人が働いたことがあるかの有無を問うたアンケートでも、60%以上が有りと答えている。そこで今回はどこのコンビニでもアルバイトとして見かけることが珍しくなくなった外国人留学生について取り上げてみた。

 

 近所にネパールの食材や雑貨などを扱う店がある。

 いつも数台の自転車が店の前に乱雑においてあって、濃い顔のネパール人がコンビニにたむろする若者のように群れている。

 数年前までは中国雑貨店が近くにあったが、今はそのネパールの店の方が繁盛しており私も数回食材を買い求めたことがある。店番はネパール人のアルバイト男女が交代でやっており、話しかけると結構流ちょうな日本語を話す。

 

 そのアルバイトに「仙台には何人くらいのネパール人がいるの?」と尋ねると「センニンクライ」との答え。「みんな何をしているの?」というと「ニホンゴガッコウ」。

 

 仙台にはこのように1000人位のネパール人がいるらしいが、そのほとんどは語学留学生のようである。

 東北大学には留学生が2000人以上いるが、そのうち1000人位が中国人でネパール人は9人しか在籍していない。ベトナム人は49人おり、町の飲食店やコンビニでよく見かけるベスト3の外国人は、感覚としては東北大学の留学生の在籍数とは反対に1位ネパール人、2位ベトナム人、3位中国人の順位のような気がしてならない。

 

 アメリカでは大学への留学生は原則としてアルバイトは禁止であり、例外は学内で働く場合のみ許可されるというが、語学だけの留学生のアルバイトは完全に禁止となっているので日本のように働きながら語学を習うことはできないのだ。 

 

 日本の場合には大学の留学生も語学留学生も、週28時間の以内であれば働くことが認められている。しかし現実的には日本に来るための借金の返済や日本語学校の学費、母国への仕送り、自分の生活費を賄うということは非常に厳しい。1か月に稼ぐ金額はその時間以内のアルバイトであれば、良くても10万円を超す位と想像できる。

 

 ある大学の研究者がネパール人語学留学生にインタビューをした結果、かなりの学生がその制限をオーバーしてタプルやトリプルのアルバイトを兼務していた。彼らはアルバイトに疲れて果ててしまい、授業中も寝ている学生も少なくないという。彼らが出稼ぎを目的としているということは明々白々なので、所轄官庁の見て見ぬふりではなく現実的にどうしたら外国人の労働力をうまく活用できるかということを早急に検討してほしいのである。

 「日本で働いている外国人は本当に日本に永住したいのか?」というと、ほとんどはある程度働いたら自国に帰りたいというのが大半だそうである。労働力として入国させたら定住してしまうのでごく少数の例外ばかり気にしていたら前に進むことはできないのではないだろうか。

 

 私の知り合いの家族の女性は以前に日本語教師の資格を取り、外国人向けの日本語学校で教えていたがあまりのグレーさに辞めてしまったという。辞めた詳細の理由は言葉を濁して話さなかったらしいが、そういう状況に置かれている彼らも別な意味での被害者かもしれない。

 このように教えられる側も教える側も疲弊してしまうことは、お互いに不幸であり日本の国に対してもあまり良くない印象を持つことになると、来日する動機が薄れてしまうことになりかねない。

 

 台湾や韓国では制度は違うが既に単純労働でも10年以上の就業が可能であり、日本での就業のハードルの高さに送り出しする国は次のように言っているという。

 

 ベトナムの仲介業者は「我が国の労働者は、日本に行かなくても容易に台湾などで働くことができるので、 日本の制度が今のままであれば日本企業で働く人は減っていくだろう」

 また、ミャンマーの管轄の責任者は「韓国は渡航費用が安く、高い収入を得られるので、人気になっていて私たちは韓国の制度を高く評価している」

 

 日本の人口はなだらかに減少しているのだが、さらに15歳から64歳という生産人口も減り続け、75歳以上の後期高齢者は団塊の世代がそれに加わると増々拍車がかかり増大していく。

 後期高齢者が増加してくると、生産人口の層から相当の人達が介護やそれにまつわる仕事をしなければならず、さらに働き手が足りなくなる。

 

 日本に住む外国人は増え続けていて2017年6月時点で247万人と過去最高になっており、20年前と比べると約100万人も増えている。

 全国1741のすべての市区町村の約75%にあたる1316市区町村で外国人が増加して、日本人の人口が減った一方、外国人は増えたという自治体も1050あるという。

 

 茨城県では外国人労働者が農業に従事する20代への依存度は既に2人に1人となっており、技能実習生がいなければ野菜が作れないという状況になっているらしい。漁業関係では宮崎県沖でインドネシア人実習生が釣ったカツオを、鹿児島県枕崎市の工場で中国人実習生がかつお節に加工するというオール外国人のメイドインジャパンになっているのが現況である。

 

 日本に押し寄せる2500万人の観光客は中国や台湾や韓国が多く、それらの国の所得は日本と比べてもほとんど変わらなくなってきた。

 

 それらの国には日本よりも外国人労働者が長期で働きやすいシステムができており、そこに気づき始めてきた送り出す側の国は、人の流れをそれらの国に変えていくかもしれないと考えると、将来の日本の働き手の不測の事態は到底現在の比ではないかもしれない。