第76回 続・グローバルな人材争奪戦 〜外国人の在留資格〜

第76回 続・グローバルな人材争奪戦 〜外国人の在留資格〜

 10年ほど前にウィグル人の女性を会社に採用したことがあった。

 

 それよりさらに数年前に新疆ウィグル自治区に旅行に行った時に、観光バスのアルバイト通訳として同乗していたのが彼女であった。彼女は生粋のウィグル人で新疆大学の学生であり、日本語は第二外国語として専攻しているのでかなり流ちょうに話していた。

 

 私は帰国後も彼女とメールで連絡をとっていたのだが、その後北京大学に入って勉強していると聞き、少し軽い気持ちで「大学を卒業した後に、日本で働きたいですか?」と言ったら、即座に「ぜひ、お願いします!」という答えが返ってきた。

 

 当時は私が在籍していた会社には、中国関係の仕事のオファーが時々あり、そのことが頭にあって声をかけてしまった。

 彼女は日本語検定最上位のN1を持っており、ウィグル語はもちろん中国語も完ぺきに話せること、そして専攻が環境化学であり、当社の業務内容にも関連しており技術部門にも戦力になるのではではないかと考えたのだ。

 ただ、ストレートにそのまま日本に入国して会社に入るのではなく、岩手大学の先生に頼んで研究生として育てていただき、その後に適性を判断して決めるということにしたのだ。

その1年後に、彼女は当社に入ってきたのである。

 

 ところで、生産人口の減少については、だいぶ以前から指摘されており、15歳から64歳の生産年齢人口は2013年には7,883万人と32年ぶりに8,000万人を下回った。更に2025年には7000万人となってしまうようだが、現実には18歳まではほとんどが働いていないので、確実に7000万人は割ってしまう。

 

 岩手県有数の工業都市北上市では、県自体の人口は毎年縮小しているのにこの地域だけは工業生産量が伸びており、今後も半導体関連や自動車部品、食品製造などの操業や計画が目白押しで、この数社だけでも2000人以上の雇用規模があり、今後も加速度的に雇用状況が逼迫するのは間違いないようである。すでに、ほとんどの中小企業は新卒の高校生が雇えず、そして既存の社員の流出もあり対策に喘いでいる。

 

 こういった製造業の人手不足は特に中小都市で顕著のようで、その影響もあり外国人が日本では現在17万事業所でいろいろな資格で108万人が働いている。

 

 ちなみに、その内訳は、配偶者が日本人である場合の「身分による在留資格」が38%で41万人、外国人留学生の「資格外活動」として22%の24万人、そして外国人技能実習生が20%の22万人、専門的・技術的分野が19%の21万人となっている。

 

 冒頭のナイジェリア人の場合は「身分による在留資格」、前述したウィグル人の場合は「技術的分野」となり、近所のコンビニで働いている外国人は「資格外活動」ということになる。

 

 街中のコンビニや居酒屋、レストランなどでよく見かける外国人は、ほとんどが留学生というのは周知の事実であり、最近は語学留学生が圧倒的に多いようである。

 

 今や、外国人留学生の9割がアジア圏であり、国別では中国、ベトナムに続きネパールからの語学留学生が増加している。

 留学生であれば、週28時間という制限の中で原則として自由に働くことができるので、人手不足の現場では引く手あまたである。

 

 特にネパール人が増えているという福岡市には「リトルカトマンズ」といわれる一角もあり、福岡県内で働くネパール人の留学生は5000人以上いるらしい。

 

 ネパールの首都カトマンズには日本語学校が数多くあり、日本への留学を目的として国全体では2000校以上の学校が乱立されているという。そして、現地の留学仲介業者には100万円前後の手数料を支払っても、若者たちは日本に来ることを望んでいるという。

 

 そして日本の語学学校に5万円の月謝を払い、国での借金の支払いもあり、アルバイトで生活費も捻出している。彼らが本当に日本語を習ってそれを生かすために来日したのか、それとも「稼ぐ」ためなのかはわからないが、どう考えても大変に厳しい状況ではないかと思う。

 

 最近の県内のニュースなどでも、ベトナム人の女性語学留学生が週に28時間制限に違反し、50時間以上のアルバイトが発覚し強制退去となった事例や、ネパール人の20歳の女性語学留学生が、食品製造会社で機械に腕を巻き込まれて切断する事故で、その会社関係者が書類送検されたとの内容が報道されていた。

 

 我が国の隣国の台湾や韓国では、雇用の担い手として安全対策や雇用条件などが日本よりも一段も二段も優れた制度を運用しており、仕事によっては日本の外国人技能実習制度と同職種でも30万円稼げることも珍しくないという。

 

 このままでは、我が国は先細りの生産人口とともに外国人にまで見捨てられる国になってしまうので、政府及び関係官庁はしかるべき制度をより早く作って運用してほしいものである。