第44回 社員をやる気にさせる教育 〜階層別研修〜

第44回 社員をやる気にさせる教育 〜階層別研修〜

今年も、はや4月となり新聞やテレビラジオでは、入社式の様子が報じられ社長の訓示や新入社員の決意表明を見聞きすることが多くありました。そんな初々しい新入社員も3か月経ち半年経ち1年2年と社会経験すると、会社と社員がお互いに「アレッ? こんなはずでは・・・」ということが出てきて、おめがね違いか、ボタンの掛け違いか、勘違いか、少しずつ社員が会社を去っていくことがあります。

 

以前に高校卒業の社員が入社した時のことでしたが、「自分はこちらの会社に合いません!」と言って半日で辞めた最短記録を達成した社員?がいて、その永遠不滅の記録はいまだに破られてはいないのです。

 

そこで、今回は具体的な社員教育の方法について紹介していきますが、教育というのはビタミン剤や健康食品と同じようなもので、有効性があったかそうでなかったかは、何年もたってみないとわかりません。「やはり教育はやっておくべきだった」と後悔してからでは遅すぎることがあるので、やはり継続的にやらなければ「ゆでガエル」企業になることは必須かもしれません 。

 

私がやっていた「階層別研修」について紹介します。

それは、フライ級からヘビー級の7階級に分けて研修をします。初級・中級クラスなどや、一般・管理職などと命名して研修するよりも遊び心を少し入れながらスポーツのランキングのように、きめ細かく分けてやった方が効果が出るのではと考えたからなのです。

 

これは年度ごとに替わる場合もあり、研修の詳細は表題に沿って更に具体的になります。又、技術力や営業力などの実践面のスキルについては別途に計画を立ててやりました。

具体的な研修内容の表題例の一部は下記のとおりです。

 

フライ級

  • 勤続4年以下で年齢が22歳以下
  • ◎職場のルール、仕事の進め方
  • ◎社員・社会人としての基本的なスキルを身につける

バンタム級

  • Ⅱ等級で勤続が5年以上又は年齢が23歳以上
  • ◎業務知識の再学習、コミュニケーション力の向上
  • ◎改善のネタを見つける意識改革

フェザー級

  • Ⅲ等級で35歳以下
  • ◎徹底した品質管理と原価管理を学ぶ
  • ◎実務問題解決力、原価意識の向上

ライト級

  • 35歳以上で役職社員以外
  • ◎実務経験で培ったスキルの更なる向上
  • ◎判断力、問題解決力、想像力を身につける

ウェルター級

  • 50歳以上 熟年者
  • ◎50代からの生き方と健康管理
  • ◎後輩への技能の指導と継承

ミドル級

  • 35歳以上の役職社員
  • ◎対人折衝力、情報収集、分析力、目標達成力等
  • ◎相互の理解力を高め最強のチーム作り

ヘビー級

  • 管理職
  • ◎総合力のスキルアップと知見知識の向上
  • ◎管理力と経営力の強化
  • ◎社外ゲストによる講話

 

「能力×やる気」の計算式通りに、社員力を高めていくことは並大抵ではなかなかに叶うものではありませんが、やはり繰り返し何度もやっていくことが大切です。

 

数年前に景気が落ち込んだ時期に、社内の勤務時間内に外部講師をよんで勉強会をすると、国から補助金が出るという制度があるので、その年の秋にそれを関係当局に計画申請しました。

 

ところが、その申請が却下されたということで総務の担当者が私のところに来て、「一緒に役所に行って説得してほしい・・・」というSOSがきました。国の某出先機関に行くと若くてきれいで優秀そうな女性が出てきて、テーブルを挟んで私と名刺を交換し、臨戦態勢のような隙のなさそうな身構えで椅子に座りました。

 

当社担当者が「再度検討していただき、申請を受け付けてもらえないでしょうか・・・?」と切り出すと、出先機関の女性に「以前に教育した内容が少しでも入っていたら、補助金は出せません!」と鬼か夜叉の形相でぴしりと言い渡されました。

 

そこで私は「教育というのは復習が一番大事で、前にやったことに全くふれないで進めることは聞いたことがない・・・」旨をあの手この手で説得し、結局は1時間ほどかかりましたが、すったもんだの末に「今回だけは受付を認めます・・・」との言質をいただいたことがありました。

 

社員教育をするときは、きちんとした社員育成計画を作ることはもちろんですが、会社の歴史を説明する場合も、成功体験だけではなく会社として失敗したことや、過去に取引先が倒産して苦労した話など「裏社史」なども取り混ぜながら話せば、より社員の頭に残るのではないでしょうか? TVの「しくじり先生」ではないですが、失敗した時に得た教訓も伝えることによりプラス面の考え方も学ぶことができるはずです。

 

最後に経営者は「愛のある会社」を目指して社員を育てることを実践すれば、必ずや社員は戦力にもなり一緒についてきてくれるのではないかと私は確信しています。