第38回 「待てば甘露の日和あり」 〜「待つ」は得か損か?〜

第38回 「待てば甘露の日和あり」 〜「待つ」は得か損か?〜

「待てば海路の日和あり」とか「果報は寝て待て」ということわざは、「今はあまり焦らないで、じっと待っているうちに必ず良い機会がくるのだ」という意味だが、「待つ」ということについていろいろな事例で考えてみる。

 

観劇会

数年前に宝塚歌劇団の地方公演があったが、私も一度はどういうものなのか観てみたいと思い観劇したことがある。会場内は予想した通り、圧倒的に女性で会場内の席が占められ、ほかのコンサートなどと違って雰囲気が全く違っていた。休憩時間になると数百人以上の女性が一斉に動き出し、興奮冷めやらぬ顔でおしゃべりをする、持参したおやつやおにぎりなどを食べる、宝塚グッズ売り場に阿鼻叫喚のごとく群がる、自販機に我先にと並ぶなど会場内外が喧噪かつ騒然となる。

圧巻はトイレに並ぶ女性たちで、三途の川に並ぶ亡者のようにどこが列の終わりかわからないほど延々と列が続いており、他人事ながら並んでいる人の中には間に合わないのではないかと心配してしまう。係りが「ここが最後尾」のプレートでも持ったらいいのではないかと責任者に進言したくなったほどである。隣の男性トイレを皆羨ましそうに見ているが、この宝塚観劇の女性達は比較的に若くて行儀が良いのだが、以前に中高年が多い歌謡ショーを観に行ったら、空いている男性トイレに勇猛無比の中年女性が、髪を振り乱し切羽詰まって「トイレ空いてるからいいよね!!!」といって、私が用足ししているのをかまわず進撃してきたことがあった。

 

宝くじ

宝くじを私は買ったことがないが、発売日によく高額賞金が出るといわれる宝くじ売り場には、ものすごい数の人が並ぶ。以前に東京に行った時に寒い中、厚着で気太りした人たちが、ビル街の歩道を所狭しと並んでいたのを見て「売り切れになるから並ぶのか」と思ったがそんなことではなく、当たりが多い売り場に人が多く並ぶという。近所にも「1億円1等賞が○○回出ました!」という評判の宝くじ売り場があったが、福の神の売り場のおばあさんがいなくなってからは、並ぶ人の姿はほとんど見かけなくなった。インターネットでも詳細にどこの売り場がいいのか出ているようだが、宝くじど素人の私はどこで買っても同じではないかと思うのだが、やはりマニアにはいろいろとこだわりがあるようである。

 

東京ディズニーランド

東京ディズニーランドでも並んで待つというのは常態化しているようだ。今はインターネットで、リアルタイムの待ち時間を知ることができたり、ファーストパスという便利なシステムもあるようだが、普通は1、2時間待ちが当たり前で、過去最高では500時間という気の遠くなるような待ち時間があったそうだ。そんなに待ったら自分の寿命が尽きてしまいそうであるが、今の若い人たちは「ゆとり世代」なのか、「待つ」ということにも楽しみを見つけているようだ。1983年の開業の翌年に社員旅行で行った時は、半日の滞在時間で一つか二つのアトラクションしか経験できない残念な思いをしたものだ。

 

ラーメン屋など

誰もが行列の「待つ」を経験したことがあるといえば、やはり飲食店である。その代表格はラーメン屋でどこの地でもいつでも並ばなければ入れない店があるが、そこそこ並んではいるラーメン屋の中には、客よりも店主がえらいと勘違いして、昼のピークタイムに「子供連れはお断り」など時代錯誤の張り紙をしているところもある。又、なぜ雑誌などに載るラーメン屋店主は、腕を組んでいるのか、心理学的には自分に絶対の自信があり人の話しは聞かない傾向があるので、そういうところは遠慮したくなる。ただし、一部のマニアだけが列を作るのでなく、老若男女の年齢層が幅広い行列が並んでいる店は、ほとんど外れがなく味はもちろん店の応対もいいので、そういう店は間違いがない。仙台名物の牛タン店は市内に100軒以上あるが、行列の店でも夜にビールを飲みながら食べていると、「早く飲んで、早く食べて、早く勘定して、早く出ていけ!」のオーラがバリバリと出ている迷店もあるので、そういう見極めも大事である。

 

パチンコ店

時々パチンコ店の新装開店で朝から並んでいるのを見ることがあったが、なぜそんなに早く並ぶのだろう、球がたくさん出る台を早く確保する為なのか、それとも新しい台を早く打ちたいのか、早く行くとなにか店のサービスが受けられるのか。昔は開店と同時にジャン、ジャン、ジャンジャガラッチャ♪の軍艦マーチが響き渡り、客は脱兎のごとく店に駆け込んでいったものだが、今はどうなのだろうか。今のパチンコ台は最先端の電子部品を満載しており、1台の価格は40万円前後というから、新しいからといって客にそんなにサービスをしてくれるわけがないのだとは思うのだが・・・

 

通販

私が知っているその分野では著名な女性が以前に、「どうしても通販で買いたくなるのよね」といってある時期にはハマってだいぶ買い求めたらしく、あのジャパ○○○タ○○に代表されるテレビショッピングの魔力は相当なものである。「限定」とか「今だけ」とか「これだけ」とかで、見ていると私も買いたくなってしまう時がある。その時は、メモにその商品名と用途を書いておいて、1週間後にまだ欲しいか2週間後に本当に必要なものかを再確認すると、ほとんどのモノが買いたいという衝動も熱気も冷めてしまうのである。

 

 

「待てば海路の日和あり」とはもともとは、「待てば甘露の日和あり」であり、待っていれば天が甘い霊液を降らして良いことがある(悟りが開ける)という意味でもあるということなので、「待つ」ということは「待たない」よりはきっといいことなのだろう。